脳卒中のリハビリに革新をもたらす技術としてブレイン・マシン・インタフェース(BMI)技術が注目されている。申請者の最終目標は、BMIを早期脳卒中患者用のリハビリ装置として実用化し、たくさんの患者において後遺症を減らし、活力のある生活をいち早く取り戻させることである。このBMIリハビリを臨床的に実用化できれば脳卒中片麻痺患者の生活の質(QOL)向上に大きく貢献でき、海外を含めた数多くの脳卒中BMI研究の中で、わが国が大きくリードすることができる。最終年度となる令和2年度では、BMI訓練効果の定量化を実施し、実用化に向けた次の段階へ進むことを目指した。 現在までに開発したシステムは、ポータブルかつ病室のベッド上でも使用でき、脳卒中患者が麻痺側手関節の伸展をイメージすると、脳波からそのイメージを検知して、筋電気刺激装置を駆動することができる。本年度では、旭川医科大学病院リハビリテーション科の協力の下、臨床応用として脳卒中発症から7~24日後の患者4名がベッド上で安全に訓練できることを示すことができ、その成果は査読付き海外英文誌Assistive technologyに原著論文として掲載された。 従来の脳卒中BMIとは異なり、本システムは発症直後から使用することで早期の回復を狙えるものと言える。対象者らはほとんどの訓練日で当初予定していた120-200試行の訓練を実行できた。また、麻痺側運動機能項目(SIAS運動スコア17))の評価でも改善が見られたものの、現時点においては、それが自然回復によるものか、BMI訓練の介入によるものかはわかなかった。新型コロナウィルス流行の影響もあり、それ以上の臨床での評価は難しかったため、本実施年度途中からは、開発したシステムをさらに改良すべく、経頭蓋電気刺激法を組み込むことを目指し、健常者での試験的な測定も実施した。
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