研究実績の概要 |
本研究では、これまで、姿勢の変化と加齢の関係を調べ,静止時よりも動作時の方が加齢の影響を受けること、また、65歳以上の高齢者の姿勢・年齢・性別・骨密度・身長・体重・体脂肪・左右腕力・左右脚力、及び、転倒歴の有無を調べることにより、高齢者の健康状態には個人差があり、筋力・体脂肪・姿勢のパラメータにより健康状態の分類が可能であることを示してきた。さらに、姿勢への影響は,直立静止時よりも立ち上がりや歩行時などの動作時に,前傾が起こりやすくなるなど,姿勢の変化が顕著に出ることも明らかにした。これらの知見に基づき、最終年度は、高齢者の健康状態の個人差に着目し,動作時の姿勢の改善技術の提案を行った。 従来の姿勢の改善については、静止時の脊柱の湾曲度合いを計測し、その結果に基づき助言を行う手法が一般的であった。しかし、まず、静止時の姿勢の計測結果に基づき、動作時の姿勢の改善へつなげることは難しい。また、基本的な姿勢制御は、外乱に対して姿勢を維持する姿勢反射と、上肢など身体の一部の随意運動を達成するための無意識的な姿勢調節で構成される。実環境における歩行などの動作時には、安全な動作のために、周囲や外乱に向けて注意を向ける必要もあり、動作中に意識的に姿勢改善を行いつつ、外乱等に対応していくことは、ユーザに負荷をかけることになり得るとともに、安全性が懸念される。そこで本研究では、複合現実(Mixed Reality, MR)の技術を活用し、MRゴーグルを装着したユーザが現実空間上に自己の姿勢をリアルタイムで可視化するシステムを構築し、評価実験を行い、その有効性を示した。
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