本研究の目的は、糖尿病ラットと健常ラットにおいて、廃用性筋萎縮モデルを作製し、その後、運動負荷を加え、糖尿病がその回復過程における筋組織および筋張力に与える影響を明らかにすることである。糖尿病ラットについては、日本人の糖尿病の95%に相当する2型糖尿病モデルラットである、Goto-Kakizaki rat(以下GKラット)を用いること、運動負荷として、臨床応用可能な荷重、トレッドミル歩行について頻度も含め検討することが本研究の独自性である。対象とする筋は、TypeⅠ線維が多いとされるヒラメ筋と、TypeⅡ線維が多いとされる長趾伸筋とし、実験介入後の筋湿重量、筋線維横断面積、筋線維タイプに加え、機能的評価として、筋張力を測定する。具体的には、GKラット、健常ラットそれぞれに2週間の尾部懸垂法を用いて、後肢筋の廃用性筋萎縮を作成後する。その後、再荷重を行い、その回復過程1週間後、2週間後における変化を確認する。左後肢から取り出したヒラメ筋・長趾伸筋を用いて、筋線維横断断面積・壊死線維数等を測定し、右後肢から取り出した筋を用いて、筋張力の測定を行った。筋張力は、単収縮、強縮、筋疲労の測定をおこなった。各ラットの再荷重群は、1週間後、2週間後を作成し、回復過程を確認した。実験の結果、尾部懸垂によって、ヒラメ筋については、健常ラット・GKラットともに、廃用性筋萎縮が惹起され、筋線維横断面積・筋張力の低下は同程度みられ、糖尿病の影響は明らかではなかった。また、回復過程においても同様の傾向を示した。一方、長趾伸筋については、筋線維横断面積はGKラット、健常ラットで同様の傾向を示したが、筋張力においては、GKラットの方が低下しやすい傾向を示した。回復過程においては、2週間で同程度の回復を示した。
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