研究課題
心疾患を罹患している患者の再入院増加と医療費の圧迫が社会問題となっており、いかに少ない経費で医療費を削減するかが大きなテーマとなっている。これまでに「心疾患患者の運動機能(腕の力や脚の力)は健常者と比較して低下している」こと、「心疾患患者の再入院増加には運動機能の低下が関与している」こと、および「トレーニングによって心疾患患者の運動機能は改善する」ことを明らかとした。しかしながら、運動機能を改善させることによって再入院率が低下するか、また医療費の削減効果があるかについては本邦では明らかとなっていない。本研究の目的は心疾患患者に対するリハビリテーションの実施によって、再入院率の減少と医療費削減効果について明らかにすることである。本研究で特筆すべき内容は、運動機能の改善と再入院率の関係を調査するのみならず医療費削減効果を前向きコホート試験により検証しているところにある。本年度の研究では、まずはベースラインとなる入院期間中の運動機能や日常生活動作(ADL)の評価と、退院後の再入院の関係について調査を行うことからはじめた。具体的には、入院期に心臓リハビリが処方された18歳以上の心疾患患者として、退院時に握力、等尺性膝伸展筋力、short physical performance battery (SPPB)、片脚立位時間、歩行速度およびADLを評価した。現在、30症例の登録が完了し退院後の再入院の有無について追跡調査とさらに症例数を追加している。現在までの結果として、運動機能の中でも特に歩行速度が低い患者の方が退院後の再入院率が低い傾向にあることが認められている。
2: おおむね順調に進展している
本研究の主目的は「心疾患患者の運動機能の改善が再入院率の低下ならびに医療費の削減に寄与するか」を証明することである。研究1では運動機能の改善と再入院率の関係を明らかにするために、ベースラインとなる運動機能やADL評価を行った。急性心不全患者を対象として、入院期間中の心臓リハビリテーションによって運動機能やADLが改善した群と改善しなかった群を比較した。その結果、入院期間中にADLが改善した群の方が改善しなかった群と比較して退院後の再入院率や死亡率が低いことが明らかとなった。現在、医療費についても調査を行っている。したがって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
現在、研究1の結果をもとに、医療費削減効果について調査を行う。さらに、合わせて当院の外来心臓リハビリテーションが処方された18歳以上の虚血性心疾患患者とし身体機能評価を実施中である。測定開始時に運動機能評価を実施し、3ヵ月後に再度運動機能評価を実施する。その際に、①運動機能が改善した群(改善群)、②運動機能が変わらない群(不変群)、③運動機能が低下した群(低下群)、の3群に分類し、その後1年間の心血管イベント発生を評価する。なお、イベントは①全死亡率、②心血管由来の死亡率、③再入院率、に分類して解析を実施する予定である。
測定に必要な消耗品や備品が予定よりも安くで購入出来たため。また、次年度使用額は平成31年度請求額と合わせて物品費として使用する予定である。
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