研究課題/領域番号 |
18K17721
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
片岡 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (50749489)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脊椎圧迫骨折 / 認知行動療法 / 痛み / 多面的アウトカム |
研究実績の概要 |
脊椎圧迫骨折(以下,圧迫骨折)に伴う急性腰背部痛により日常生活活動(activity of daily living;ADL)能力の低下を来たすケースには,リハビリテーション(以下,リハ)を中心とした保存療法が施行されることが多い.また,最近の先行研究では保存療法を施行した圧迫骨折患者の腰背部痛やADL,身体パフォーマンス,身体活動量(以下,活動量)といった多面的アウトカムの改善には受傷後初期の活動量やfear-avoidance(恐怖・回避)思考が影響することが明らかになっており,早期からこれらを改善するリハ戦略の開発が求められている.一方,認知行動療法(cognitive behavioral therapy; CBT)は痛みをはじめ,活動量や恐怖・回避思考の改善に有効な治療とされている.そこで,本研究では 圧迫骨折患者に対する通常のリハとCBTの併用効果を痛みや恐怖・回避思考,身体パフォーマンス,身体活動量に加え,筋機能も含めて検証することを目的としている. 本年度は,主にCBTの方法と筋機能の評価方法について検証してきた.CBTについては,活動記録表,目標設定シートの形式の決定とフィードバック方法のスタッフ間での統一を図った.その後,5名の圧迫骨折患者を対象にCBTを導入したリハを施行し,円滑に遂行できることを確認した.ただ,CBTを導入した5名の各アウトカムと通常介入を行った8名の患者を比較しても,現在のところCBTの導入による優位性は認めていない.また,筋機能の評価方法については,徒手筋力測定器を用いた筋力評価の方法や,超音波画像診断装置による筋圧の測定方法について検査者間での統一を図り,2回測定した平均値にて検討していくことに決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はCBTの方法の確立と,我々がこれまで実践できていなかった筋力や超音波診断装置を用いた筋機能能評価方法の確立を基盤に研究計画を進めてきた.現状,CBTの方法としては円滑に進めやすい内容となっており,その方法については確立したといえる.また,筋機能の評価方法についても験者間で統一が図れたため,無作為化比較試験を進める準備は整っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,圧迫骨折患者に対するCBTの効果について,骨格筋機能も含めた多面的アウトカムの改善状況から検証するため,無作為化比較試験を進めていく.対象者数は,Hiraseら(European Journal of Pain, doi: 10.1002/ejp.1149.)の先行研究を参考に算出した.この報告では,慢性疼痛高齢者患者を対象に,活動記録表を使用した活動量のモニタリングとフィードバックによる介入を併用した効果を検証しており,疼痛をメインアウトカムとしてEffect Sizeを算出すると,0.61であった.そこで,検出力を0.8,有意水準5%,ドロップアウト5%として対象者数を算出すると各群36例,計72例が必要となる.そこで,本年度は30~40例の対象者に介入をしていきたいと考えている.また,研究成果については実践報告として症例報告から行っていく予定である.
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