研究課題
癌に由来する心筋障害は、癌患者の重要な死因である。しかし、そのような障害を治療するための食事療法の開発は進んでいない。本年度は、中鎖脂肪酸であるラウリン酸とグルコースの併用によるがん性心筋障害に対する食事介入の効果を検討した。ラウリン酸はマウス悪液質モデルの骨格筋サルコペニアに対して有効であることをすでに報告しており、心筋障害に及ぼす影響を検討した。H9c2ラット心筋芽細胞をラウリン酸で処理あい、シーホース・フラックス解析を行うと、ミトコンドリア呼吸が促進され、ATP産生が増加したが、酸化ストレスは増加しなかった。解糖系もラウリン酸によって促進された。対照的に、心筋芽細胞をマウス悪液質モデルの腹水で処理したin vitro悪液質モデルでは、ミトコンドリア呼吸とATP産生は抑制され、酸化ストレスは増加した。 さらに、in vitro悪液質モデルでラウリン酸と高グルコースの同時処理を伴うと、ミトコンドリア呼吸と解糖が対照よりも促進され、ATPが対照のレベルに回復した。酸化ストレスもラウリン酸と高グルコースの併用により減少した。in vivoマウス悪液質モデルでは、心筋の萎縮と筋肉成熟のマーカーであるSDS可溶性MYL1のレベルの低下が観察された。 ラウリン酸を単独で経口投与した場合、がん性心筋障害には有意な回復は観察されなかった。対照的に、ラウリン酸とグルコースの併用経口投与は、癌の重量を増加させることなく、心筋萎縮とMYL1を対照群で観察されたレベルまで回復させた。したがって、癌性悪液質に対するラウリン酸とグルコースの組み合わせを使用した食事介入は、癌性心筋損傷を改善する可能性が示唆された。
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