脳卒中後疲労は、脳卒中患者の約半数に認められる症状であり、社会復帰の制限、生活の質の低下、死亡率の増加に関連する因子であることが報告されている。脳卒中後疲労の原因は、いまだ十分に解明されていないが、身体活動量の低下に伴う全身持久力の低下に関連すると考えられている。しかしながら、脳卒中後疲労と全身持久力の関係については十分な検討がなされていなかった。そこで、回復期病棟に入院中の脳卒中患者を対象に、脳卒中後疲労と全身持久力にかかわる運動時呼吸循環応答の関係を明らかにすることを目的に研究を遂行した。 昨年度までの研究成果として、①回復期病棟入院時における脳卒中後疲労は退院時の日常生活活動自立度の低下に関連すること、②運動時の酸素摂取量の増加には骨格筋における酸素利用能が関連すること、③運動開始時における酸素摂取量の増加速度は心拍出量の増加速度に関連することの3点が明らかになった。 最終年度には、これまでの研究成果を踏まえて、脳卒中後疲労と運動時呼吸循環応答の関係について包括的に解析した。その結果、脳卒中後疲労は、最大強度での運動時における酸素摂取量(最高酸素摂取量)よりも低強度運動開始時における酸素摂取量の増加速度に関連することが明らかになった。また、脳卒中後疲労は運動開始時における心拍出量の増加速度とも関連することが示された。すなわち、脳卒中後疲労を有する患者は、運動のために身体の要求に見合った酸素を供給する能力が低いことが示された。運動開始時における酸素摂取量の増加速度は、運動療法を行うことで改善することが報告されている。また、脳卒中後疲労もまた運動療法により改善する可能性が先行研究で報告されている。したがって、回復期リハビリテーションにおける積極的な運動療法は、脳卒中後疲労の予防や改善に寄与する可能性が示唆された。
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