研究課題
慢性期脳卒中患者のInstrumental Activities of Daily Living(IADL)の特徴とIADL能力における遂行機能の関与を検証した。認知機能に問題のない地域在住慢性期脳卒中患者を対象とした。遂行機能の測定として、Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome(BADS)とTrail Making Test(TMT)Part AおよびBを用いた。IADLの測定として、JST版新活動能力指標をメインとして用い、補助的にLawtonのIADLスケールを用いた。また、基本的動作能力の指標として、Functional Independence Measure(FIM)を用いた。交絡要因として、麻痺の程度、感覚障害の程度、高次脳機能障害、うつ状態、転倒関連自己効力感、歩行能力、バランス能力を評価した。分析は、JST版新活動能力指標のサブカテゴリー間(新機器利用、情報収集、生活マネジメント、社会参加)のスコアの高低を検証するために、Kruskal-Wallis検定と多重比較を行った。IADL能力の高さに関連する遂行機能を検証するために、交絡因子を制御した偏相関分析を行った。分析の結果、JST版新活動能力指標のサブカテゴリーの内、社会参加の値が有意に低かった。JST版新活動能力指標の合計値やFIM、LawtonのIADL能力とBADSの合計点やTMTの値には、有意な相関は認めなかった。一方、社会参加の値は、ルールの遵守と運動の計画性が求められるBADSの項目およびTMT part Bと有意な相関を示した。結果は、慢性期脳卒中患者は社会参加が他のIADLに比べて困難であり、その要因として、ルールを守りながら運動を計画することや、TMT Part Bが示すワーキング・メモリの低下の関与が示唆された。
3: やや遅れている
研究の準備は順調に終え、研究自体は開始されているものの、当初計画より研究参加者が少なく、計画通りの参加者数で検証ができていない。その理由として、測定に要する時間が長く、測定の実施自体が困難であったり、測定を断られたケースが複数あったりしたことが挙げられる。また、研究参加候補者が認知機能障害を有しており、適応外となったケースが複数あったことも理由として考えられる。
現在行っている研究を継続して行い、研究参加者数を増加させる。計画通りの参加者数が集められていないため、協力頂ける施設を増加させ、参加者数の確保を図る予定である。また、この研究と並行して、令和元年度中に介入研究に着手し、その効果の検証まで行う予定である。令和2年度においては、上記介入研究の発展形として、遂行機能に対する介入における長期的な効果について検証を行う。
当該年度は研究計画初年度であり、本研究テーマにおける研究実績がなかったため、学会参加とそれにかかる費用(旅費)が当初計画より少なく済んだ。次年度は、これまでの研究結果について公表するために、当該年度以上に学会参加を行う予定をしている。そのため、学会参加とそれにかかる費用を支出を要する。また、更なる研究を行うための準備として、必要備品や物品の購入を行う予定である。
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