本研究課題では、複数の小型センサの有機的統合に挑戦し、変形性膝関節症患者の階段昇降や方向転換等の動的課題における機能的移動能力を非侵襲で評価可能なシステムを提案する。この計測システムを用いてコホート調査を行い、転倒を招きやすい運動器不安定症に係る知見を得ることを最終目標としている。しかし、最終年度はコロナウイルスの蔓延のため、センサを用いた大規模な運動機能計測を医療機関で行うことができなかった。 そこで研究計画を一部変更し、地域の整形外科クリニックに外来通院中の変形性関節症患者49名(44-78歳、女性比65%、Kellgren Lawrence grade 1-2)を対象とした横断研究を実施した。超音波診断装置を用いて大腿四頭筋の脂肪変性を非侵襲的に評価し、変形性膝関節症重症度の関係性を一般化線形混合モデルを用いて評価した。その結果、大腿四頭筋の脂肪変性が強い方ほど、変形性膝関節症の重症度が高いことが明らかになった。また、個々の大腿四頭筋を個別に評価した場合には、大腿直筋よりも内側広筋の方が、変形性関節症の重症度の予測精度が高かった。骨格筋の脂肪変性は超音波診断装置を用いて簡便に評価できることから、大腿四頭筋、中でも内側広筋の脂肪変性評価は、変形性関節症や変形性関節症に起因する運動器不安定症の発症ならびに進行の予測に有用な可能性がある。本研究成果は論文としてプレプリントサーバーであるmedRxiv上で公開するとともに、専門誌の査読結果待ちである。
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