研究実績の概要 |
関節軟骨の変性は,局所における力学的ストレスが過剰または欠如した状態で惹起される.この機序を解明することは,リハビリテーションを実施する上で重要な情報となり基礎的知見を提供することができる.そこで,本研究の目的は,生理的範囲から逸脱した力学的ストレスを感知し軟骨変性に至る反応経路の一端を明らかにすることである. 本年度は,力学的ストレスの過負荷による軟骨変性がTRPA1チャネルを介しているかについて,TRPA1チャネル選択的阻害薬を用いて検証を行った.実験対象にはラットを用い,力学的過負荷により変形性膝関節症(OA:Osteoarthritis)となるモデルラットを外科的に作成した.グルーピングは,OA群+DMSO投与群,OA+阻害剤投与群とし,阻害剤にはTRPA1チャネル選択的阻害剤であるA-967079を用いた.加えて,OA+阻害剤投与群は,0.2mg/kg, 0.4mg/kg, 0.6mg/kgの3つの投与量別に3群を設定し4週間の皮下投与を実施した. その結果,TRPA1チャネル選択的阻害剤投与群では,OA重症度スコアが大腿骨および脛骨内側面において有意に低値を示したが,完全にOAを防止するには至らなかった.また,阻害剤の投与量依存的にOA重症度が改善する傾向がみられたが,投与量間では有意差は認めなかった.次に,関節軟骨を構成する成分の一つである2型コラーゲンの免疫組織化学染色を実施した.その結果,OA重症度スコア同様,阻害剤投与群で改善が認められた.加えて,酸化ストレスの間接的影響を検証するため,尿中の酸化ストレスマーカ―を比較検証した結果,阻害剤投与量依存的に酸化ストレスが減少する傾向が認められたが,2型コラーゲンの発現量との相関関係は認められなかった.
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