神経活動抑制作用を有する経頭蓋磁気刺激は、小型磁石による静磁場刺激を利用した新規非侵襲的脳刺激法である。本研究課題においては、脳血管疾患への応用を目的とした臨床研究、静磁場刺激の作用メカニズム解明を目的とした基礎医学的研究の2点から研究を実施してきた。 健常者を対象した臨床研究では、静磁場刺激により同側運動野の興奮性は抑制され、対側運動野の興奮性は増大すること、刺激側から非刺激側への半球間抑制が抑制されることという結果を得た。2021年3月にその成果が国際誌へ掲載されている。 脳スライスを用いた基礎研究では、静磁場刺激が細胞に与える影響について、細胞膜の透過性亢進、神経細胞の発火閾値上昇、イオンチャネルの関与という新奇性の高い知見を得ており、令和3年度においては引き続き論文作成を進めたが、論文掲載には至らなかった。 in vivoでの静磁場の効果に関する検証では、運動機能に対して刺激領域に依存した抑制性作用を有することを示し、2021年3月に国際誌へ掲載されている。令和3年度においては、同実験で得られたデータをより詳細に解析するためにプログラミングツールの開発を行った。具体的には、静磁場刺激をしている最中の自由行動をビックカメラで撮影し、その軌跡を追従し、総移動距離などを算出できた。運動野刺激時の影響は認められなかったが、今後別の脳領域を刺激した際の効果検証に使用していく。 これらの成果が評価され、計測自動制御学会 ライフエンジニアリング部門シンポジウム2021ではシンポジストとして招待され,講演を行った。
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