研究課題/領域番号 |
18K17741
|
研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
金崎 雅史 姫路獨協大学, 医療保健学部, 講師 (10707871)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 息切れ / メントール / 慢性閉塞性肺疾患 / 吸気抵抗負荷呼吸 |
研究実績の概要 |
Transient Receptor Potential Melastatin 8 (TRPM8) は三叉神経上に発現が認められ,低温やL-メントールによって活性化される。TRPM8の活性化は清涼感を惹起し気流知覚に関与する。動物実験では呼吸数や呼吸ドライブの抑制が報告されているが,健常者による自験例ではメントール嗅覚刺激は呼吸パターンや換気量の抑制を介さず運動時及び吸気抵抗負荷時の息切れを緩和させることがわかっている。同様の手法を用いてCOPD患者に加えて高齢者における息切れ,呼吸パターン及び呼吸神経ドライブに対するメントールの効果を検討することを目的とした。 外来COPD患者32 例及び高齢者14名を対象とした。解析対象は28 名のCOPD 患者と高齢者14名であった。吸気負荷中の換気量および呼吸パターン,呼吸神経ドライブはCOPD及びコントロール群においてsham,placebo 及びmenthol の3条件に有意差を認めなかった。両群において,吸気抵抗負中の平均吸気流量は3条件で有意差がなかったが,負荷中吸気流量知覚はplacebo及びsham に比べてmenthol条件で有意に増加した。一方COPD患者においてメントールは吸気抵抗負荷時の呼吸努力感と空気飢餓感を低下させるが胸部狭窄感の変化は引き起こさなかった。情動的側面ではメントールは呼吸困難感及び怖さ,不安をplacebo 及びshamに比べて有意に低下させた。しかしながら、高齢者群ではメントールによる情動的緩和の効果は認めなかった。更に、COPD患者において、placeboとmenthol 条件での呼吸困難感の変化との関連において,吸気流量知覚/EMGpara % max と有意な負の相関関係を認めた。 嗅覚刺激を利用したメントール投与はCOPD 患者における呼吸困難の緩和に有用であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
吸気筋トレーニングに対するメントール負荷は、トレーニング中の息切れを緩和する魅力的方法と考えられる。しかしながら、吸気筋トレーニングの効果判定として採用される6分間歩行試験による歩行距離や息切れに対しては、有意な改善効果が最近の無作為対照試験では十分に確認されていない。一方、COPD患者に対する漸増運動負荷試験においては、呼吸神経ドライブと息切れの減少が報告されている。従って、日常生活強度内で呼吸神経ドライブや息切れが惹起され得るCOPDの表現型を検索し、吸気筋トレーニングの効果が期待される臨床属性を明らかにすべく、57例の外来COPD患者を対象に調査を開始した。故に、予定した研究計画に比べてやや遅れいていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの調査において、COPD患者でサルコペニアを合併する症例では吸気筋力の低下を伴い、非サルコペニアと肺機能と運動中換気量がマッチングしても息切れや呼吸パターンに特異性が見られ、これらの患者では、吸気筋トレーニングの介入が強く推奨される。これらのサブグループに対してメントールを負荷した吸気筋トレーニングの効果を見る臨床試験を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた臨床研究に遅れが生じているため。
|