研究実績の概要 |
L-menthol嗅覚刺激(OSM)は、高齢者及び慢性閉塞性肺疾患患者において、吸気抵抗負荷時にみられる息切れの感覚的及び情動的側面を網羅的に緩和することが明らかになった。この知見を下に、吸気筋トレーニングに応用することが期待された。しかしながら、慢性閉塞性肺疾患に対する吸気筋トレーニングの効果において、RCTデザインによるネガティブスタディが相次いで報告された(Schultz et al ERJ 2018, Beaumont et al. ERJ 2018)。一方で、少数例でのRCTであるが、吸気筋トレーニングは同一負荷時の呼吸神経ドライブを減衰させ、息切れの緩和に有用である旨の報告がなされ(Langer et al. JAP 2018)、吸気筋トーニングの実施に当たって、日常生活活動レベルでの呼吸神経ドライブや息切れに対して恩恵を受ける患者を見出した上で、OSM併用の吸気筋トレーニングのRCTを行う必要性が高いと考えられた。そこで、我々は外来COPD患者74例を対象に、四肢筋力と骨格筋量の測定に加えて、同一運動負荷試験を実施し、換気応答並びにMultidimensional Dyspnea Profile日本語版を用いて、息切れの感覚的及び情動的側面の評価を行った。その結果、我々は、サルコペニア合併COPD患者は浅くて速い呼吸を呈し、呼吸困難感および精神的呼吸努力感の悪化を示すことを明らかにした。また我々はサルコペニア合併COPD患者における息切れの悪化には浅くて速い呼吸が寄与する可能性も合わせて報告した。これらの知見より、サルコペニア合併COPD患者の方には適切な気管支拡張薬に加えて、速い呼吸パターンを是正し得る吸気筋トレーニング必要性が示唆された。故に、今後サルコペニア合併COPD患者に対する吸気筋トレーニングの効果とOSM併用の効果が期待される。
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