【背景】身体活動は食事と独立した腸内細菌叢の構成決定因子である可能性が示唆されており、腸内細菌叢の恒常性を維持・改善するための治療的戦略の一つとして考えられている。身体活動と腸内細菌叢の関連に関する報告は動物実験での結果が主であり、ラットにおける随意運動は腸内細菌叢の多様化を惹起することが報告されている。一方で、ヒトを対象とした研究では、横断研究が主であり、身体活動介入が腸内細菌叢に与える影響は完全には明らかになっていない。本研究の目的は、日本人の腸内細菌叢の構成を変化させうる身体活動の条件を明らかにすることである。 【方法】健常若年成人男性30名(平均20.7歳)がランダム化クロスオーバー比較対照試験に参加した。参加者は、6週間のコントロール(Control)施行、6週間の中強度運動施行(Ex)を実施した。Exの運動強度は心拍数にて50%強度で設定し、週150分(50分の運動を週3回)を実施した。介入中の身体活動と強度は心拍計内蔵型活動量計にて管理を行い、それぞれの期間前後に、腸内細菌叢の構成、体組成、身体機能、食事摂取、身体活動を評価した。 【結果および結論】6週間のExにより、Proteobacteria門(Bilophia、Parasutterella)が有意に減少した。運動による腸内細菌叢の変化はマウスによって確認されているが、本研究結果は、多様な食事習慣を有するヒトにおいても、身体活動が腸内細菌叢の構成に影響を及ぼしうることを示すものである。身体活動と腸内細菌叢の関連性は他国で報告されているものの、腸内細菌叢は食習慣によって大きく異なる。日本人における腸内細菌叢と身体活動の関連性を明らかにしたことは我が国における生活習慣の取り組みの施策に影響を与えるものと思われる。
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