大腿切断者の自転車使用は行動範囲の拡大、レジャー・スポーツ活動に伴う活動量増大、社会参加の促進につながると期待される。本研究の目的は片側大腿切断者の自転車のペダリング動作習得、パフォーマンス向上を考える上で問題となる切断者・義足・自転車の要素がペダリングの生体力学的特性(関節運動、力の作用)に及ぼす影響を明らかにし、大腿切断者のペダリング運動の指導・トレーニングに活用できる定量的情報を提供することである。既存の筋骨格モデルを元にペダリング運動の筋骨格モデルを作成し、自転車や義足の形状変化に伴う義足側ペダリングの漕ぎやすさの変化をシミュレーション解析するプログラムを作成した。これにより7つの要素(座面の高さ、骨盤の前後位置、前後傾、座面チューブ角、クランクのアーム長、大腿部/下腿部の長さの比、足部のペダルに対する前後位置)を変化させた場合のペダリングの挙動の変化を評価できるようになった。この解析プログラムを用いてペダリング時の座面の高さが各筋のクランク回転能力に与える影響を解析し、合わせて股関節筋の種類によるクランク回転能力の違いについても論じ、大腿切断者の動作時の内転筋群の重要性を示す根拠を得た。他の要素を含めた解析結果については国際学会発表、プレプリントサーバーに投稿の上、国際誌論文投稿を進めている。 最終年度は上記の論文投稿、修正の継続とともに、論文掲載後の公開予定である筋骨格シミュレーションソフトウェアOpenSimと数値解析ソフトMATLABを用いて大腿切断者の自転車運動の運動学シミュレーションを行える解析ファイルを整備した。
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