研究課題/領域番号 |
18K17750
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松島 佳苗 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (60711538)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 触覚 / 自閉スペクトラム症 / くすぐり / 対人反応 / コミュニケーション / 視線計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、乳幼児期の対人関係に重要な役割を担っている触覚に着目し、自閉スペクトラム症(ASD)児の非言語的コミュニケーションに関する新たな臨床的知見を得ることを目的としている。触覚刺激の中でも、特に「くすぐり」への反応は、自他の認知を基盤としていることが示唆されている。
当該年度は、予備調査ならびに実施方法の再検討を行うために、3‐5歳の定型発達児を対象に「くすぐり」課題時の視線を計測した。課題概要として、「くすぐり」刺激時に数秒間の休止を入れ、検査者の行為(くすぐり)を予期している時の視線(注視時間)を計測した。「くすぐり」を介した関わりに関する先行研究では、生後6ヶ月以降に自己身体を対象化することで成立する三項関係の芽生えが報告されているが、多くのASD児は三項関係の発達に課題を示すことが知られている。そのため、くすぐりを介した関り時に、相手の意図を推察するために表情に注目する傾向が弱い可能性がある。そこで、「くすぐり」刺激間の休止時に検査者の顔を注視した時間の割合とASDの行動特性の関係性について検証を行った。ASDの行動特性に関しては、SRS-2対人応答性尺度(SRS-2)を用いた。結果、SRS-2の下位尺度である「社会的気づき」と顔の注視時間の間に、有意な負の相関関係が示され(r =-0.54, p=0.04, R2 =0.30, power [1-β] = 0.51)、「社会的気づき」におけるASD特性が強いほど顔への注視時間が短いことが明らかとなった。触覚刺激への過剰反応性に関しても、感覚プロファイルを用いて同様に関連を検証したが、感覚特性と注視時間の間には有意な相関関係は認められなかった。
幼児期のASD児を対象に行った予備調査では、「くすぐり」を要求する反応が観察されていることから、視線を含めた対人反応に対する支援についても研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、研究計画に基づき、定型発達児を中心に予備調査を実施することができた。また、これらの予備調査を基に、具体的な実験内容の再検討や対象者のリクルートに関しても検討を行うことができており、おおむね順調であると判断している。
しかし、予備調査においては、被験者にとって可能な限り自然な環境でのデータ収集を優先したことから、当初計画していた全ての生理指標を計測できていない。そのため、次年度以降では、予備調査結果を基に生理指標を含めた追加データ収集を実施していく必要がある。
ASD児に関しても、数名の予備調査を実施することができているが、比較検討を行っていく上ではASD児の対象者数を増やす必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の予備調査の結果を基に、引き続き「くすぐり」課題時における視線計測を、定型発達児ならびにASD児を対象に実施していき、ASDにみられる特徴を検証していく。特に低年齢児のデータを収集することで、早期支援のためのバイオマーカーとしての可能性を検討すると共に、対人的反応を引き出す関り方に関しても検証を行っていく。ただし、低年齢のASD児の場合には、視線計測機器の装着が難しいケースも多いため、検査者もしくは保護者が装着して行う方法を採用することを計画している。
また、乳児期の児を対象として、安静時の自律神経指標を中心とした生理指標のデータを収集することを検討しており、自立神経活動の指標と「くすぐり」刺激の関連について検証を行う。当該年度の定型発達時を対象とした予備調査では、感覚特性と「くすぐり」刺激時の視線との関連は示されていないが、ASD児の多くが過剰反応など感覚の問題を示すことから、感覚刺激に対する生理的反応を含めて検証を行っていく必要がある。
さらに、早産児などASDを発症するリスクが高いことが報告されている児は、ASD児と類似した「くすぐり」刺激に対する特異的な反応を示す可能性があるため、本研究の研究対象として追加していくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、予備調査の実施を行ったが、生理指標の計測など一部データ収集を実施出来ていない。そのため、次年度では予備実験の結果に基づき、必要な指標の追加を再検討している。複数のデータ計測を実施する上では、実験補助の人件費ならびに研究協力者への謝金が、翌年度分として請求した助成金に合わせて必要である。また、質問紙の追加購入、ディスポーザブル電極などの消耗品に関しても、データ数を増やしていく上で不可欠となるため、主にデータ収集に関連した経費としての使用を計画している。
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