本研究の目的は、地域で生活する精神疾患をもつ当事者の自己開示量を対象別および内容別に調査し、リカバリーの促進に影響する自己開示の要因を明らかにすることであった。 これまでに、精神科デイケアを利用する当事者、ピアサポート活動に従事する当事者、障害福祉サービスを利用している当事者に対して、自己開示とリカバリーに関するアンケート調査を実施した。その結果、開示対象では「家族」や「専門職」よりも「同様の病気や障害をもつ当事者」が、リカバリーの促進に影響する要因として挙げられた。また、内容では「生活状況」や「自分の強み」についての自己開示が、リカバリーの促進に影響する要因として挙げられた。最終年度ではまとめとして、データ解析の継続をしながらも、精神疾患をもつ当事者や障害福祉サービスに所属する専門職からのフィードバックを受け、学会発表や論文作成に向けた準備を進めた。 以上より、本研究の目的である「地域で生活する精神疾患をもつ当事者の自己開示量を対象別および内容別に調査し、リカバリーの促進に影響する自己開示の要因を明らかにすること」は概ね達成することができたと考える。しかしながら、本研究を通して、精神疾患をもつ当事者の自己開示の背景には、個人の性格傾向や疾病による特性など、他にも考慮すべき要因がある可能性が推察された。また、リカバリーの促進要因である「同様の病気や障害をもつ当事者」においても、ピアサポーターとの関わりの有無やサービスの利用状況によって、リカバリーに与える影響が異なる可能性も推察された。今後も対象者数や測定因子を増やした上で、本研究で得た成果を多角的に検証していく必要がある。
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