研究課題/領域番号 |
18K17756
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
瀬高 裕佳子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (20404767)
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研究期間 (年度) |
2019-02-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 排尿障害 |
研究実績の概要 |
令和元年度では、脊髄損傷モデルを作成して、排尿障害に関わる脊髄神経回路を電気生理学的に解析するための実験手技を確立させた。 成ネコを用いて、セボフルラン+笑気+酸素吸入麻酔下で無菌的に腹部正中部を約7cm切開し、膀胱を露出させた。膀胱にダブルルーメンのカテーテルを刺入し、手術糸で膀胱壁に固定した。2本のカテーテルは、皮下を通して頭蓋骨頭頂部にデンタルセメントで固定し、開口部は栓をした。一側のカテーテルには、注入装置を用いて、37℃に温めた生理食塩水を一定速度で膀胱内へ注入できるようにした。もう一側には、圧力センサーを取り付けて膀胱内圧を測定できるようにした。麻酔覚醒後、37℃に温めた生理食塩液をシリンジポンプにてカテーテルへ注入して排尿反射を誘発し、膀胱内圧の上昇を確認した。 術後6日後、同じ動物を用いて脊髄損傷モデルを作成した。セボフルラン+笑気+酸素吸入麻酔下で挿管し人工呼吸管理下にて、無菌的に第3頚髄と第4頚髄移行レベルで脊髄を半切した。術後、翌日から3日間、排尿反射を誘発したところ、膀胱内圧の上昇が認められた。 半切後8日目に、筋電図を測定するためワイヤー電極の植込みを行った。セボフルラン+笑気+酸素吸入麻酔下で、ワイヤー電極を外腹斜筋に留置した。さらに、左腰部の腸骨吻側部の皮膚を切開して脂肪を一部取り除き、外尿道括約筋を剖出しワイヤー電極を留置した。ワイヤー電極は、頭部に固定したコネクターならびにアンプに接続し、排尿時における外腹斜筋と外尿道括約筋の筋電図を記録できるようにした。手術終了後、切開した皮膚を縫合し、術後2日間は抗菌薬と非ステロイド系鎮痛薬を投与した。術後、膀胱内に留置したカテーテルを用いて、37℃に温めた生理食塩液をシリンジポンプにて注入し、排尿反射を誘発したところ、膀胱内圧の上昇および半切側においても外尿道括約筋と外腹斜筋の筋活動が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
排尿障害に関わる脊髄神経回路を電気生理学的に解析するにあたり、まず、膀胱にダブルルーメンのカテーテルを刺入し、手術糸で膀胱壁に固定し生理食塩水を一定速度で膀胱内へ注入し、同時に膀胱内圧を測定できる動物モデルを作成した。動物が覚醒状態で37℃に温めた生理食塩液をシリンジポンプにてカテーテルへ注入して排尿反射を誘発し、膀胱内圧の上昇と排尿現象を確認できた。さらに脊髄損傷後において膀胱内圧と外腹斜筋、外尿道括約筋の筋電図を測定することができた。今回の結果をふまえて、効率良い実験手技の修正を検討することもできており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、セボフルラン+笑気+酸素吸入麻酔下で正常ネコを用いて、ダブルルーメンカテーテルを膀胱に留置した後、排尿反射時に外尿道括約筋支配神経より神経発射を記録し、仙髄より排尿に関わる介在ニューロンの活動様式を解析する。介在ニューロンのうち抑制性神経回路に着目し、外尿道括約筋運動ニューロン軸索側枝から興奮性入力を受け、運動ニューロンを単シナプス性に抑制するレンショウ抑制性介在ニューロンの解析を行う。 また、脊髄損傷後モデルを作成して、半切後5日目において、セボフルラン+笑気+酸素吸入麻酔下で排尿障害時におけるレンショウ抑制性介在ニューロンの活動様式を調べる。さらに、排尿障害時におけるレンショウ抑制性介在ニューロンの活動性を高め、正常な排尿を誘発することについても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な手術台やバイタルサインモニター、脳固定装置、増幅器等の電気生理学備品、顕微鏡や手術器具等はすでに設置されているものを活用した。今後、ニューロンの活動電位や膀胱内圧等のデータをコンピューターに取り込むためのインターフェイスが必要であり購入予定である。また、飼育のための飼料や薬品、電子部品の購入も予定している。
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