申請者らは、糖尿病モデルラットを豊かな環境で飼育(enriched environment : EE)する事で、認知症が引き起こ す学習記憶障害が予防されることを確認した。さらにEEが認知機能へ及ぼす効果メカニズムとして、糖尿病による高血糖状態が内在性骨髄間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem sell : BM-MSC)の異常化を進めてしまい、EEがBM-MSCの異常化を改善すること、さらに改善されたBM-MSCがマイクロRNA- 146aを含むエクソソーム(exosomal miR-146a)を血行性に分泌し、アストロサイトの炎症を改善し神経保護作用を促す可能性を見出した。これらの研究において EEは24時間で9週間介入を行なったが、短時間のEEにおいても効果があるかどうかを検索した。またEEのどのような構成成分(社会的相互作用・運動・認知)がBM-MSCの異常化およびマイクロRNA に影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。結果、糖尿病モデルラットのEEの短時間介入群は、非介入群よりも学習記憶障害が有意な改善が認められ、さらにcontrol群と同様の値であった。BM-MSCの形状や増殖能も糖尿病モデルラットの非介入群と比較して介入群は有意な改善が認められた。この後、コロナ禍の影響や実験施設の変更などが続き、期間が空いてしまったため、BM-MSCの遊走能及び、exosomal miR-146aの検査を行う為、新たな糖尿病モデルラットを飼育し細胞を取り出す必要があったが、コロナ禍が長引いたこともあり遂行が困難となった。また動物実験室や研究機器の研究協力をして頂いていた大学のスタッフの刷新もあり、現状の計画では研究が続けることが困難となったため中途終了となった。
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