本研究では、呼吸器疾患患者、要介護高齢者、地域在住高齢者に対し、筋量(サルコペニア)、栄養、嚥下機能の評価を行った。まず、呼吸器内科疾患患者において、栄養はMini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)、嚥下機能は舌圧とEating Assessment Tool-10(EAT-10)、サルコペニアは握力および下腿周径により評価した結果、低栄養は13.6%、サルコペニアは25.4%であった。過去 3 ヵ月間の精神的ストレスや急性疾患の経験とBody Mass Index が舌圧と関連がみられ、MNA-SF はサルコペニアの独立した因子であった。つまり、呼吸器疾患患者におけるサルコペニアの有病率は高く、舌圧より低栄養が関連することが明らかになった。 次に簡易評価を開発する点では、要介護高齢者の嚥下機能評価として舌圧測定の信頼性が高い一方、3回測定中3回目の測定値が低下することが明らかになった。さらに、地域在住高齢者の筋量の評価として、Asian Working Group for Sarcopenia 2019で推奨されている3つの方法によりサルコペニアの感度、特異度、AUCを算出した。3つの方法とは、下腿周囲長、SARC-F、SARC-CalFである。それぞれの感度、特異度、AUCはそれぞれ、下腿周囲長が83.3%、62.8%、0.60、SARC-Fが11.1%、91.7%、0.50、SARC-CalFが66.7%、81.8%、0.53であった。SARC-F、SARC-CalFは特異度が高く、サルコペニアを見過ごす可能性が低いという点で有用な評価方法であった。
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