本年度の実績としては、①昨年度までのラットケトン食実験の成果を、学術誌に投稿し採択となった。本発表では、ケトン食をひと月摂取させることで、長趾伸筋の有酸素性代謝を担うクエン酸合成酵素、コハク酸脱水素酵素、あるいはベータ酸化に関わる酵素の発現を改善することが可能であること、ミオシン組成を遅筋化することを報告した。ケトン食摂取は体重の減少を来したが、摘出筋パフォーマンス評価では、筋機能に対する悪影響は見られなかった。すなわち、ケトン食は体重減少と骨格筋の有酸素性代謝能力改善を両立させることができることが示された。②ラット実験の成果より、ケトン食摂取は骨格筋の酸化系酵素活性や筋線維の遅筋化を進めることが明らかとなったが、その調節を担う代表的な転写因子群に変化が見られなかった。特に、その機序と考えていたPGC1αにも変化が見られなかったことから、当初予定していたPGC1αノックアウト遺伝子組み換えマウスの導入と、使用計画を一旦停止し、異なる機序の検索を開始した。酸化系酵素やミオシン分子の遺伝子発現が、対象の構造的変化に起因するのではないかとの考えに至り、マウスを用いて長期間のケトン食摂取がエピジェネティック特性に影響を与えるかどうかの検討を計画した。まずは、マウスを用いたケトン食の摂取実験がラットと同様に、骨格筋の有酸素性代謝能力の改善をもたらすかどうかを確認するために、発表論文と同様の実験プロトコールにてマウスを飼育する準備を進めている。
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