研究実績の概要 |
過剰な同時収縮は円滑な関節運動を阻害し,機能回復の妨げや,運動パフォーマンスを低下させる要因となる.この要因の一つとしては,脊髄相反性抑制機構の破綻が報告されている.本研究では,同時収縮中の脊髄相反性抑制との関係を明らかにすることであった. 同時収縮中の脊髄相反性抑制の機能を明らかにするため,まず同時収縮中の収縮強度に着目し,ヒラメ筋と前脛骨筋の筋活動量を同程度にして,最大収縮の30%までの収縮強度で脊髄相反性抑制を計測した.その結果,最大収縮の15%以下では脊髄相反性抑制が働くことを明らかにした(Hirabayashi et al., Front Hum 1Neurosci, 2018).脊髄相反性抑制には,2シナプス性相反抑制(Ia相反抑制)と短潜時抑制(D1抑制)があることから,それらも詳細に計測した.また,ヒラメ筋と前脛骨筋の収縮強度も同程度でなく収縮の割合も変化させ計測し,脊髄相反性抑制は筋活動に依存しているのか,発揮した関節トルクに依存しているのかが不明であったため,筋活動だけでなく関節トルクも測定し実施した. その結果,拮抗筋の筋活動より主動作筋の筋活動比が高い同時収縮中はIa相反抑制とD1抑 制が働き,発揮される関節トルクではなく筋活動比に依存して脊髄相反性抑制が機能していることを明らかにした(Hirabayashi et al., Exp Brain Res, 2019). 同時収縮中の収縮強度と拮抗筋同士の筋活動比によって脊髄相反性抑制が変調することが明らかとなり,同時収縮と脊髄相反性抑制との関係を解明する基礎的知見となった.
|