研究課題
統合失調症の症状のうち認知機能障害は、社会適応と強く相関しており重要な要因である。特に認知機能で社会適応と相関する要因は発散的思考が指摘されている。この発散的思考は言語性課題を用いたIdea Fluency Test(IFT)と非言語性課題を用いたDesign Fluency Test(DFT)が使用されてきたが、申請者は共同研究者とともに言語性課題と非言語性課題を統合して測定することのできるThe Tinkertoy Test(TTT)を修正した修正版TTTを開発してきた。本来、TTTはLezakが遂行機能検査として開発した検査であり,検査成績が社会生活を反映する生態学的妥当性を有する可能性が指摘されている。そこから着想を得て、修正版TTTが統合失調症患者の社会適応を測定するパフォーマンステストとして有効なのかを明らかにすることを目的とした。平成30年度は横断的研究により,精神症状( Positive and negative syndrome scale)、神経認知機能(Brief. Assessment of Cognition in Schizophrenia)、発散的思考(IFT・DFT)、修正版TTTと社会生活能力(Global Assessment of Functioning・Life Skills Profile-39)の関連性を検討し、データ取得を終え論文作成中である。さらに縦断的研究として認知機能リハビリテーションのひとつであるVocational Cognitive Ability Training by Jcoresを実施し、介入前後比較のデータを取得している。現在、目標人数に向けて、リハビリテーションを継続しつつ、画像データと神経心理評価尺度の解析を進めている。今後の研究の推進方策として、研究協力施設を募り対象者数を増やしていきたい。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度に横断的研究を行った。取得データとして、基本情報(性別、年齢、教育期間、罹病期間、CP換算値)、精神症状(PANSS)、神経認知機能(BACS日本語版)、発散的思考(IFT・DFT)、修正版TTTと社会生活能力(GAF・LSP-39)の取得が終了している。今後、横断的データに基づき論文作成を行う。さらに縦断的研究は、協力施設の倫理委員会の許可を得て研究協力施設の協力の下、対象者募集と平成30年度から前倒しで介入プログラムを開始することができている. 平成31~32年度は縦断的研究を継続していく。また、修正版TTT実施時の脳血流反応の関連も検討していく。以上より進捗状況は順調である。
現在、協力施設は1施設であるが、開始時期を早めたことで順調な進捗状況である。今後,複数施設の協力を得てさらに研究対象者のリクルートをすすめる。また、平成31年度は修正版TTT実施時の脳血流反応の関連を検証する準備を行う。
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高次脳機能研究
巻: 39(1) ページ: 10-17