研究課題
本研究の目的は、老化により損傷しやすくなった骨格筋の回復障害に対して、線維芽細胞の活性化を糸口にリハビリテーション的治療を開発することである。線維芽細胞は筋を保護する基底板を構成しているコラーゲンを産生する。そこで線維芽細胞を活性化して基底板構築反応を促す事で、老化に伴う筋の脆弱化や回復遅延を打開すべく3つの研究項目に取り組んだ。具体的には、①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明、②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定、③基底板構築を促す因子における治療的ポテンシャルの検証の3点である。まず①老化による基底板構築能の低下における分子メカニズムの解明については、老年ラットを用いて骨格筋の遺伝子解析を実施した。その結果、老年ラットでは筋損傷後の回復過程において基底板の主成分であるCollagen IVやそのフォールディングに関与する因子の遺伝子発現量が若年よりも低下していることが確認された。このことは老化が基底板の主成分であるCollagen IVの産生能力を低下させていることを示唆している。次に②老化した線維芽細胞の基底板構築能を活性化する因子の同定については、まず若年ラットを用いて骨格筋のCollagen IV産生が上昇する因子を探索した。その結果、荷重刺激や走運動で骨格筋内のCollagen IVの遺伝子発現が上昇すると同時に、高負荷の走運動後はTCF4陽性細胞の発現数を増加させることも確認できた。このことは運動が線維芽細胞によるCollagen IV産生を伴う基底板構築を促すことを示唆している。最後に③基底板構築を促す因子における治療的ポテンシャルの検証については、10週間の運動介入を老年ラットに処方した結果、基底板関連因子の遺伝子発現量が増加する事が明らかとなった。
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Biomedical Research (Tokyo)
巻: Accept ページ: 1-4
Connective Tissue Research
巻: Online ahead of print. ページ: 1-12
10.1080/03008207.2020.1791839