本研究の目的は,複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者に対して,鏡療法時の鏡像肢知覚評価質問票の妥当性を検証し,さらに鏡像肢知覚に基づいた段階的鏡療法を実施することで,従来の鏡療法に比べて優れた治療成績が得られるかを検討することであった。 鏡像肢知覚評価の妥当性を検証するため,令和3年度は新たに3名のCRPS患者のデータを取得した。鏡像肢知覚の評価項目として設定した①静止している鏡像肢の観察,②他者に触れられている鏡像肢の観察,③他者に動かされている鏡像肢の観察,④自身で動かしている鏡像肢の観察,⑤自身で動かしている鏡像肢を観察しながら同様の運動をイメージ,⑥鏡を見ずに運動イメージの6課題全てにおいて,健常者と比較して,CRPS患者では鏡像肢の身体所有感と運動主体感が低く,課題時の痛み強度,不快感が強い傾向にあった。しかしながら,予定症例数である20名のデータが取得できず,統計学的検討は行えていないため,今後症例数を増やし,検討する余地がある。その上で,鏡像肢知覚に基づく段階的鏡療法の効果検証を行う必要性がある。
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