リハビリテーション(以下、リハビリ)の目的の一つは患者に最適な動作を学習させることであり、日常生活活動(ADL)のほとんどが潜在的学習や手続き記憶の結果として自動化、保持される。しかしながら手続き記憶能力やその他の高次脳機能とリハビリ効果について検討された研究は少ない。そこで我々は中脳-基底核-大脳皮質回路を中心とした変性疾患であり手続き記憶の障害が生じるとされるパーキンソン病(以下、PD)患者を対象として研究した。(1)順序ボタン押し課題、(2)Serial reaction time task(SRTT)などの手続き記憶検査とリハビリ効果との関連について検討を行った。 (1) PD患者20例を対象とし、リハビリ開始前に順序ボタン押し課題を1ヶ月間隔で2回施行し、学習良好群と学習不良群の2群に分けた。入院リハビリを2ヶ月間実施して、リハビリ前(T0)、後(T1)、退院6ヶ月後(T2)にUPDRS-Part2(ADL)で評価した。T2において学習良好群で有意に効果の持続を示した。 (2) PD患者22例を対象とし、リハビリ開始前にSRTTを実施した。SRTTの評価には4つのボタンを使用した評価機器を用いた。10回の定まった順序を1パターンとして10周(100回)を1Blockとし、4Block(400回)の順序課題と、その後1Block(100回)のランダム課題を実施した。SRTT結果とリハビリ効果(FIM運動)との関係を検討した。健常者と比較しBlock1からBlock4の反応時間の短縮は乏しく、Block4からBlock5の反応時間の延長も乏しかった。手続き記憶の指標であるBlock4からBlock5の反応時間の延長が少ない程、FIM運動(ADL)の改善が少なかった。PDにおいて手続き記憶の問題があり、これがADL獲得の障害になっている可能性がある。
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