研究課題
呼吸困難感とは,呼吸を行うことが容易ではないという感覚,あるいは呼吸に伴う不快感・苦痛をいう.呼吸困難感は,呼吸器疾患患者では特に労作時に増強し,患者の活動量を低下させ,QOL低下を引き起こす要因となる.そのため,患者の呼吸困難感を軽減させることは,呼吸リハビリテーションの実施上,極めて重要である.しかし,呼吸困難感の知覚機序は未だ十分には解明されておらず,呼吸困難感の緩和法も十分には確立されていない.研究代表者は,呼吸困難感の知覚機序について,「下部脳幹部の呼吸中枢からの出力指令であるmotor commandと実際に実現された換気運動の大きさ・タイミングのミスマッチを大脳が感知した時に呼吸困難感が知覚される」という仮説を提唱し,その場合に存在するはずの「延髄で形成された呼吸活動運動指令の上行性コピー投射(運動指令随伴発射)」を,実験を通して実証した.具体的には,摘出間脳下部脳幹脊髄標本を用いた膜電位イメージング解析により,間脳で呼吸リズムに同期して活動する領域を同定するとともに,同定した領域が延髄の呼吸リズム形成機構を含む吻側腹外側野と解剖学的につながっていることを組織学的に確認した.呼吸調節機構や呼吸困難感の知覚機序についての研究は,これまで肺,胸壁および呼吸筋の受容器などの末梢受容器や頸髄から橋までの領域に注目したものが多く,橋よりも高位の領域に注目した研究は非常に少なかった.本研究は,橋よりも高位の間脳に注目している点に独自性がある.本研究は,呼吸困難感の知覚機序に,下部脳幹だけでなく,より高位の脳領域も関与していることを示した点に意義がある.
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