膝前十字靱帯(ACL)損傷は体幹が受傷側に側屈・後傾し、膝外反が生じて受傷することが示されており、体幹・股関節の神経筋コントロール機能との関連が考えられている。これに対して、実際の神経筋コントロールと膝関節キネマティクス、キネティクスとの関連については明らかになっていない。さらに種々の損傷予防トレーニングが提唱されているが、これらのトレーニングが、いかなる機序をもってACL 損傷予防に寄与しているかは解明されていない。本研究では、着地動作時の体幹・股関節のキネマティクス、キネティクス、筋活動を計測することで、それぞれのスポーツ選手に特徴的な神経筋コントロールのパターンを明らかにして、これらがどのように膝外反を引き起こしているのかを解明し、神経筋コントロールと膝関節運動に与える効果を解明する。 予備実験で、大学生男子サッカー選手を対象に、Drop vertical jump中の体幹・股関節・膝関節のキネマティクス、キネティクスと体幹と下肢の表面筋電計による筋活動を計測した。予備実験で、今回の被験者ではトレーニング前後でのバイオメカニクスデータに差がでないと考えられたため、評価時には疲労プロトコールを追加することとした。まずトレーニング前にパワーマックスで疲労プロトコールを行わせ、疲労前後で比較を行った。結果として、股関節・膝関節の屈曲が減少し、体幹の屈曲が増加した。膝の伸展モーメントは疲労後に減少した。さらに疲労後では外側広筋の筋活動が増加し、ハムストリングと四頭筋の共収縮比(H:Q)が減少していた。 この後、8週間のコアマッスルトレーニングによる介入を行い、疲労プロトコール後に計測を行ったところ、体幹・膝関節の屈曲角度が増大したが、膝外反角度、股関節のキネマティクス、vGRF、膝関節伸展モーメントと外反モーメントにはトレーニング前後で有意差を認めなかった。
|