令和3年度では,昨年度に構築したシミレーションモデルを活用して,動作の変化のうちのタイミングのみを変化させた最適化計算によって打撃パフォーマンスを向上させる最適な動作の探索を目指した. 昨年度までの取り組みによって,打撃パフォーマンスを向上させるためのシミレーションモデルが構築できた(標準動作およびAngle-driven).すなわち,標準動作における上半身の動作(関節角度)の時系列データの特徴点(変曲点)を変化させることによって,打撃パフォーマンスの指標であるバット・ヘッドスピードを向上させる最適な動作を探索するが可能となった(関節角度の値・タイミングを変化).今年度については,さらに有用な知見を獲得することを目指して,打撃動作の改善において,動作パターンを大きく変化させずにパフォーマンスを向上させる可能性を有する上半身の動作タイミングのみの変化による最適化計算を実施した(関節角度のタイミングを変化). その結果,上半身の動作タイミングのみの変化によるパフォーマンス最適化計算において,バット・ヘッドスピードが計測値の35.6 m/sから39.2 m/sとなる上半身の動作を探索することができた.このバット・ヘッドスピードの増加には,主にバレル側の肘関節回外および手関節撓屈,ならびに体幹の右側屈のより早いタイミングによる変化が,またバレル側の肩関節外転のより遅いタイミングによる変化が寄与することが明らかとなった.
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