研究課題/領域番号 |
18K17789
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大林 太朗 筑波大学, 体育系, 助教 (60810017)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 関東大震災 / 被災地復興 / 運動会 / 権田保之助 / 民衆娯楽 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、関東大震災(1923年)からの復興に向けたスポーツ界の対応を明らかにすることである。首都圏の大半が焼失し、10万人超の犠牲者を出した未曽有の大災害を前に、大正・昭和初期のスポーツ界の中心にいた人々は、何を考え、どのような行動を起こしたのか。 今年度の主な成果は、関東大震災後の東京市における「慰安運動会」(1923年11月25日、於:上野公園)について、当時の社会学者:権田保之助が遺した史料を新たに発見し、そこからバラック(仮設住宅群)における人々の避難生活の様子、同運動会が実施された経緯、そしてそれがバラックで生活する被災者にとって娯楽(気晴らし)としての大きな意義を有していたことを明らかにしたことである。この史料は、戦前の日本における「スポーツを通した震災復興」の状況をより詳しく把握するための重要な知見をもたらすものと考えられる。 なお、本年度(令和2年度)は、当初の研究計画上では最終年度の予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、やむなく一部の調査・分析を次年度に延期することとなった。一方でこのコロナ禍において、1918年~1920年頃のスペイン風邪流行と当時のスポーツ界の動向に社会の関心が集まったことは、ほぼ同時期(大正後期~昭和初期)を対象とする本研究に新たな視座をもたらすものとなろう。実際に、例えば日本オリンピックミュージアムでは「復興と再生への挑戦」と題して1920年のアントワープ大会に関連する企画展を行い、そこで紹介された様々な史料は、本研究における関東大震災後のパリ大会(1924年)の分析に向けて大いに示唆に富む内容であった。 あらためて次年度(令和3年度)には、必要な史料収集を行いながら、東日本大震災(2011年)からの「復興五輪」としての東京オリンピック・パラリンピックとの関連性を含めて、研究の全体総括と成果発信に注力したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初の研究計画上では最終年度の予定であったが、本研究と関わりの深い「復興五輪」としての東京オリンピック・パラリンピックの延期、また新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、やむなく一部の調査・分析を次年度に延期することとなった。 特に、県境をまたぐ移動が憚られたことから、関東大震災の被災の中心地となった東京市(現在の東京23区エリアに近い)に所在する図書館、資料室および東京都復興記念館などへのアクセスが難しくなってしまったことは、一部の史料の収集計画を遅らせてしまうこととなった。一方で、このコロナ禍の中で関連資料のアーカイブ化ならびに公開が進み、オンラインでの資料収集の方法が著しく発展されたことは、大変ありがたいことであった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの計3年間の研究成果の総括に向けて、補完的な史料収集・分析を行うとともに、2011年の東日本大震災以降の体育・スポーツ界の状況と照らし(東京オリンピック・パラリンピックの状況を踏まえて)、本研究の現代的意義について考察を行いたい。コロナ禍による研究計画への影響は少なくないが、一方で例えば1918年~1920年のスペイン風邪流行と当時のスポーツ界の動向に社会の関心が集まったことは、本研究にも多分に示唆に富むものであった。アーカイブ化、オンライン公開が進められたシステムを最大限に活用しつつ、一方で状況が許せば現地に足を運んで、積極的に一次史料の収集・分析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの延期に伴い、当初の調査計画を2021年に延期する変更が生じたため、次年度使用額が発生した。研究計画を2021年度にスライドし、適切に使用したい。
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