研究課題/領域番号 |
18K17790
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡本 正洋 筑波大学, 体育系, 助教 (30726617)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海馬 / 低強度運動 / 海馬 / ストレス / グルタミン酸 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
近年、グルタミン酸代謝における恒常性の破綻(細胞外におけるグルタミン酸濃度の上昇)がストレスを原因とするうつ病や認知症の一因とする説が浮上している。一方、運動はグルタミン酸の作用を介して海馬を活性化することから、運動は海馬のグルタミン酸代謝の恒常性(放出されたグルタミン酸の取り込み・除去など)を強化し、ストレス適応力を高めていることが想定される。そこで本研究では、低強度運動で高まる海馬のストレス適応の分子機構として、グルタミン酸代謝の関与を明らかにすることを目的に実験を行なった。 実験では、アルツハイマー病モデル動物(5XFAD)を用い、グルタミン酸代謝の改善が、βアミロイド蓄積や認知機能の抑制に与える影響について検証した。今年度は、運動の効果を検証する前段階として、グルタミン酸トランスポーターを活性化し、アストロサイトへのグルタミン酸の取り込みを促進するリルゾール(Riluzole)の効果を検証した。その結果、リルゾールの長期間投与により、5XFADマウスに見られるβアミロイドの蓄積や認知機能の低下を抑制・改善することが明らかになった。 また、ストレス適応における運動誘発性の神経新生の役割を明らかにするために、神経新生を抑制するX線の照射条件について検討した。その結果、10GyのX線単回照射が最も効果的に神経新生(DCX陽性細胞)消失し、その効果は6週間持続していることを確認した。また、この時、X線を照射したマウスでは認知機能が低下していることを併せて確認した。運動誘発性の神経新生の役割を明らかにする上で重要な神経新生の消失条件を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルツハイマー病のモデル動物のβアミロイド蓄積や認知機能の低下にリルゾールの投与が効果的であることが明らかとなり、これらの知見を論文として公表することができた。また、神経新生を抑制するX線の照射条件や海馬のグルタミン酸測定法を確立することができた。しかし、これら実験条件・方法の確立に予想以上の時間を要し、運動の効果を十分に検証するには至らなかった点で、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
セットアップが完了したグルタミン酸測定や神経新生が消失したマウスを活用し、運動トレーニングがストレス時の海馬グルタミン酸濃度に及ぼす影響やストレス適応における運動誘発性の神経新生の役割など、運動効果に関する検証を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも実験条件の確立(X線照射やグルタミン酸測定法)に時間を要したため、解析に充当する予定だった助成金の一部を次年度に使用することになった。持ち越した助成金は翌年度の助成金とあわせて、遺伝子の網羅的解析費用などグルタミン酸の測定費用に充てる計画である。
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