研究課題/領域番号 |
18K17796
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研究機関 | 仙台大学 |
研究代表者 |
渡邉 泰典 仙台大学, 体育学部, 講師 (50638418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水辺安全 / 着衣泳 / 肺換気量 / 浮力 / 水平姿勢 / 牽引 |
研究実績の概要 |
水難者の多くが完全もしくは部分的に衣服を着た状態で水難事故に遭遇している.着衣のまま不意に水中に落ちた場合,衣服内に残存する空気が水難者の身体に作用する浮力に貢献する可能性がある.しかしながら,ヒトが衣服を着用した状態で全身浸水した場合,肺換気量や浮力や姿勢にどれほどの影響を及ぼすのかを明確に説明するには未だ十分なデータは得られていない. 本研究は,衣服の有無が水中でのストリームライン姿勢における肺換気量,浮力および浮心重心間距離に及ぼす影響を定量的に検証することを目的とした. 事前検証として,衣服が水中のヒトの身体にどれほどの物理的な影響を及ぼすのかを明らかにするため,前方牽引測定を実施した.水着条件では,対象者は腰から膝上丈のスパッツ型水着を着用した.着衣条件ではスパッツ型水着に加えて夏の軽装を想定したTシャツおよびハーフパンツ(共にアクリル100%)を着用し服装を統一した.本研究で用いた衣服は,コンプレッションウェアのような着圧の高いものではなかった.検証の結果,前方牽引張力は20lbs (88.97N)で同じにもかかわらず,着衣時は水着時よりも速度が有意な低値を示したことから,衣服着用時は受動抵抗がより大きいことが明らかとなった. 肺換気量は,着衣時(1.66±0.44L)が,水着時(1.83±0.49L)に比べ有意な低値を示した.浮力は,着衣時が水着時より有意な低値を示した.水平姿勢を評価する指標の浮心重心間距離は,水着時(1.61±0.25cm)と着衣時(1.71±0.25cm)で統計学的有意差は認められなかった. 本研究の結果から,たとえ着圧が高くない衣服であっても,水中で衣服を着用した場合では吸気に影響を及ぼすことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は測定システムの構築と実験方法の確立に時間を要したが,データ収集に関わる課題については概ね解決することができた.測定データは,関連する学会にて公表を終えている.以上の理由から,おおむね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に開発した測定システムについては,より簡易に,より正確にデータ収集ができるよう改良を進めたいと考えている.今後は,衣服条件の違いや上肢・下肢位置の違いに伴って,水中における浮力や身体の浮き方がどのように変化するかを検証し,浮き身指導に資する新たな知見の獲得を目指す予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究活動における旅費の支出額が,当初計画を下回り差額が生じたため.次年度使用額については,測定システムの改良,研究成果の発表および資料収集のための旅費に充当する予定である.
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