研究課題/領域番号 |
18K17798
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 和 千葉工業大学, 創造工学部, 准教授 (40637914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高圧高酸素暴露 / 運動学習効率 / 加速式回転棒課題 |
研究実績の概要 |
近年、体力的要素の向上を目指したトレーニングの発展はめざましく、トレーニング効率も飛躍的に向上している。しかしながら、運動スキルを獲得(運動学習)するトレーニングは、指導者の経験則に基づいた場合が多く、効率的な運動学習に関するエビデンスは乏しい。最近、潤沢な酸素供給が脳神経細胞レベルに影響を与え、空間学習・記憶能力を改善させることが報告されている。しかしながら、運動学習効率への影響は検討されていない。そこで本研究は、怪我の早期治癒や疲労回復などに有効とされる高圧高酸素治療に着目し、「運動学習効率の向上に高圧高酸素曝露は貢献するか」について明らかにすることを目的としている。 本年度は、昨年度報告での最重要課題であった実験環境の確保を最大の目的に進めた。本研究における今年度の大きな進展は、本科研費研究に関する実験が開始できるようになったことである。また、今年度の実験の結果、運動学習前の4週間に高圧高酸素を対象動物に暴露することで、加速式回転棒課題の学習効率の向上を確認した。今回の結果は、今後予定している曝露期間や運動学習前後などの曝露のタイミングによる運動学習効率への影響を確認していくうえで、非常に重要となる結果であった。また、正常無処置の対象動物の運動学習効率に、高圧高酸素曝露の有無が影響を与えるという結果は、今後の発展に大きな意味を持つと考えられる。来年度は、実験の方法論的内容も含め、研究成果の発表も進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究期間の初年度に実験環境の整備が整わずに研究が全く進まなかったことが、今年度の進捗状況にも大きな影響を与えている。しかしながら、今年度は所属機関における担当部署の協力によって、本研究の実験を開始することができた。実験開始後は、比較的順調に実験結果を積み上げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、高圧高酸素曝露の期間および曝露タイミングを変更することでの運動学習獲得効率また学習成果の保持に焦点を当て、実験を進めていく予定である。 また、高圧高酸素環境に曝露することで、小脳依存型の運動学習獲得過程にポジティブな影響を確認することができたため、空間学習記憶のような海馬依存型の学習行動試験を課し、曝露による中枢神経系の影響を確認する必要性を考えている。海馬が関与するような学習型行動試験は、比較的多くの先行研究によって報告されているため、高圧高酸素曝露による中枢神経系の適応変化を行動試験レベルで確認することは、今後の実験の進展に重要な作業であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、昨年度に計上してた大きな予算として市販の酸素カプセル機材があったが、昨年度は実験を実施することができなかったため、今年度の予算執行となったことを報告する。 申請時に計上した価格から、大幅な値引きに成功したため、大幅な予算執行減となった。そこで、酸素カプセルに計上している予算により、さらに高圧環境に耐えうる機材の作製費用として使用する予定である。
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