マッスルメモリーとは一度筋肥大を起こした骨格筋はその後筋量の低下が起こっても再度負荷を加えることで比較的速やかに筋量の再獲得が行われる現象をいう。本研究ではマッスルメモリーの分子生物学的メカニズムの解明を目指している。本年度はまず筋萎縮の際に発現する遺伝子を網羅的に解析するために、マウスを対象に後肢懸垂を施した。後肢懸垂により筋委縮が進行している後肢骨格筋のサンプリングを行い、全RNAを抽出後CAGE法(Cap analysis gene expression)により、発現遺伝子の網羅的解析を行った。解析結果から、筋萎縮に特異的に発現する遺伝子リストが作成された。現在、マッスルメモリーの分子生物学的メカニズムに関連する遺伝子の絞り込みを行っている。また、令和元年度から行っているマッスルメモリーの分子生物学的メカニズムの検討に適した細胞モデルの作成を引き続き行い、さらに高精度の細胞培養系を確立した。これまでの細胞モデル系は細胞外マトリクスが未熟なため、骨格筋のメカニカルストレス受容機構で重要になる細胞外マトリクスと骨格筋細胞との関連を検討することができなかった。そこで、細胞外マトリクスのみを抽出できる脱細胞処理により、市販の食肉骨格筋から骨格筋細胞外マトリクスを得て、骨格筋細胞培養系の器材として使用する手法を確立した。これにより、より生体骨格筋に近い細胞培養系が確立できたため、現在マッスルメモリーの分子生物学的メカニズム解明に応用してデータを解析している。
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