令和5年度は、前年度に引き続き、アスリートの効果的な感情調整に関わる神経基盤を明らかにするためにfMRIを用いて研究を進めた。 fMRの中でアスリートを対象に、4つの条件(再評価方略条件、抑制方略条件、感情調整なし条件、ニュートラル条件)下でパフォーマンス課題を実施してもらい、課題遂行中の脳活動(BOLD信号)を測定した。各条件は、再評価方略条件(ネガティブな視覚刺激によってネガティブ感情を想起させた後に再評価方略[感情を生起させる出来事を再解釈する方略]を行う条件)、抑制方略条件(ネガティブな視覚刺激によってネガティブ感情を想起させた後に抑制方略[生起した感情を表情や態度に出さないようにする方略]を行う条件)、感情調整なし条件(ネガティブな視覚刺激によってネガティブ感情を想起させた後に感情の調整を行わない条件)、ニュートラル条件(ニュートラルな視覚刺激によって感情を想起させない条件)であった。パフォーマンス指標として、選択反応課題を実施し正答率と反応時間を測定した。パフォーマンス指標の分析の結果、再評価方略条件においてパフォーマンス指標の改善が確認された。脳活動データからは、前頭葉を中心とした脳領域の活動が確認され、感情調整に関与する脳領域が確認された。さらに、これらの脳活動領域が感情調整に関与しパフォーマンスの改善に寄与している可能性が示唆された。 今年度の主な学術的な成果としては、行っていたデータ収集を完了して上記の成果を得たことである。現在、得られた知見を英文論文として学術雑誌への投稿中となっている。
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