オープンウォータースイミング(以下、OWSと記載)は海や湖等の水辺で泳ぐ速さを競う競技で、2008年北京五輪からオリンピック正式種目に採択された。OWSに関する研究は国内外を通して少なく、指導者は強化方法を模索しながら指導を行っている。 そこで本研究では、2018年度~2022年度のOWS強化指定選手を対象に、流水プールにおいて最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値の測定を行うことで、OWSトップ選手の生理学的特性を明らかにすると共に、OWSレースへの参加が競泳の競技成績に影響するか否かを明らかにすることを目的とした。 2020年度・2021年度は新型コロナウイルス蔓延により測定を実施することができなかったが、2022年度は再度測定を再開することができた。 結果として、2019年度のナショナルチームに所属している男子選手において、最大酸素摂取量と競技成績で有意な強い相関関係が認められた。一方で、相関関係が認められない年度があったことから、OWSは最大酸素摂取量以外の要素も競技成績に影響する可能性があることが示唆された。これは、OWSという自然環境下で行う競技特性が大きく影響しており、さらに対人要素も強いことからレース戦略をその時のレース状況で検討する必要があり、レース経験も競技成績に大きく影響することが関連していると考えられる。 一方で、国際大会では海外諸国の競泳の泳力が高い選手がOWSに参入しており、それらの選手がレース経験を積むことで、日本人選手が入賞を果たせなくなっている。今後は競泳の高い泳力を有している選手をリクルーティングし、OWSのレース経験を積ませる強化策をとることで、国際競技力を向上させられると考えられ、その状況に従い、日本におけるOWSトップ選手の生理学的特性も変化していく可能性が考えられる。
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