最終年度は,測定が終了したデータから曲走路疾走中のスイング脚のキネマティクス的分析およびキネティクス的分析を行った.キネマティクス的分析では関節角度および関節角速度を,キネティクス的分析では,両脚について足部,下腿部および大腿部からなる剛体リンクモデルを設定し,逆動力学計算を用いて関節トルクおよび関節トルクパワーを算出した.疾走中のスイング期は,先行研究(豊嶋と桜井,2018)を参考に時間規格化(一方の足部離地からその足部が再び接地するまでの局面を0~300%とした)を行った. 本研究はコロナ禍に行ったため当初予定していた人数の計測を行うことができなかった.そのため,群別けを行い統計分析を行うことが難しいため,直走路疾走タイムに対する曲走路疾走タイムの比を求め,その非が小さいほど曲走路疾走が得意と定義をし,その比と各変数の相関関係を調べた.しかし,有意な相関関係を見つけることができなかった.よって,本実験の範囲では,曲走路疾走が得意な選手の曲走路疾走中の脚のキネマティクスやキネティクスにはこれといった特徴はないと言える.しかし被験者が限定的であるため,より幅広い年齢の選手を対象にするなど継続した調査が必要である. また研究期間全体の結果をまとめると,曲走路疾走が得意な選手にキネマティクスおよびスイング脚のキネティクス的な特徴は見られない.しかし男子選手においては大腿周径囲が太いほど曲走路疾走が得意であった.また体力測定の結果においても統計学的な有意な相関関係は見られなった. これまでの先行研究などと合わせて考えると,曲走路疾走が得意であっても特に何か特別な指導方法が必要ではないかもしれない.男子において大腿部が太いという特徴が見られたことから,疾走動作だけではなく,支持中の力発揮や筋の形態などを調査することが必要であるかもしれない.
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