研究課題/領域番号 |
18K17811
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
羅 成圭 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (60741999)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アポトーシス / 骨格筋 / チオレドキシン結合タンパク質 / 脳 |
研究実績の概要 |
Thioredoxing interacting protein(TXNIP)は膵臓β細胞でアポトーシスを亢進させる因子である。老化にともなって進行する骨格筋や脳のアポトーシス(細胞死)は、サルコペニア(骨格筋の萎縮)や認知症(脳の萎縮)の発症に繋がると考えられている。そこで、老化にともなう骨格筋や脳の萎縮にTXNIPが関与している可能性について検証した。 16ヵ月齢のC57BL/6雄性マウスを22ヵ月齢まで飼育し、老齢群(Old群)とした。同様に、2ヵ月齢のC57BL/6雄性マウスを8ヵ月齢まで飼育し若齢群(Young群)とした。6か月間の飼育終了後、両群の骨格筋(ヒラメ筋、上腕三頭筋)ならびに脳(海馬)を採取し、TXNIPタンパク質発現量をウエスタンブロッティング法を用いて評価した。 遅筋線維優位筋であるヒラメ筋においては、老化にともなうTXNIPタンパク質発現量の増加は認められなかった。一方で、速筋線維優位筋である上腕三頭筋においては、老化にともなってTXNIPタンパク質発現量が有意に増加した。さらに、海馬においても同様に、老化にともなうTXNIPタンパク質発現量の増加が確認された。2018年度の結果から、TXNIPタンパク質発現量は老化にともなって骨格筋や脳で増加する可能性が示唆された。 今後は、老化による骨格筋や脳のTXNIP発現量の増加に対する運動トレーニングの効果を検証していく。さらに、TXNIPや骨格筋や脳のアポトーシスを誘導する機序を明らかにするために、アポトーシス関連因子についても検証を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、老化にともなって骨格筋や脳においてTXNIP発現量が高まる可能性、そして老化にともなうTXNIP発現量の増加がアポトーシスを引き起こす可能性について検証する予定であった。骨格筋や脳において老化によってTXNIPタンパク質発現量が一部増加することを明らかにしたものの、TXNIPタンパク質発現量の増加がアポトーシス関連因子に及ぼす影響については検証できなかったたため、2018年度の進捗状況は「やや遅れている」と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、骨格筋や脳の老化によるアポトーシスの亢進について検証するために、アポトーシス関連因子(cleaved caspase-3、Bax/Bcl2 ratio)を測定中である。2019年度には、老化にともなって進行する骨格筋や脳の萎縮ならびにTXNIP発現量の増加に対する運動トレーニングの効果を検証する。そのために現在は、運動負荷施設の準備ならびに至適運動強度の予備検討をおこなっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨格筋や脳におけるアポトーシス関連因子の加齢変化について現在検証を進めていることから、2018年度にはその分の費用を消費することができなかった。2019年度にこれらを検証するために繰越分を使用する予定である。
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