持久性運動前の食事は高糖質食が望ましいとの見解が一般的であるが、食後のエネルギー代謝を考慮すると高脂肪食を摂取することの利点も考えられる。すなわち高脂肪食摂取によってその後の運動でグリコーゲン利用を抑制することができれば、持久性運動種目における終盤のエネルギー枯渇問題が解消され、その結果高いパフォーマンス発揮を維持することにつながると期待できる。研究代表者は運動前の高脂肪食は高糖質食よりも脂質由来エネルギーを優先的に利用し、結果としてグリコーゲン利用量を抑制することを発表した。その後、本申請により高脂肪食中の脂肪酸の違い(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸)による持久性運動中のエネルギー代謝を比較したが、有意な差は認められなかった。 研究最終年度においては安定同位体を含む脂肪酸の試薬を用いることで運動時のエネルギー源が外因性か内因性か明らかにする予定であった。しかし研究実施を予定していた機関では新型コロナウイルス感染症の影響により外部研究者の受け入れが制限されており、研究を実施することができなかった。本申請全体で予定していた研究の半分を実施できなかったが、本申請により得られた研究成果の一部を含む総説を海外の学術誌に投稿した。 本申請により、運動前に高脂肪食を利用する場合、脂肪酸の違いまで考慮する必要はないことが示唆された。この結果から現場での実践を想定すると、運動前の高脂肪食には決められた型はなく、高脂肪であれば各々が食べやすい、または用意しやすいものを利用するのが望ましいとの解釈になる。持久性運動前の新しい食事提案につながる知見が得られたと考えている。
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