本研究の目的は、ランニング傷害の予防法を開発するための科学的根拠を得るために,陸上選手を対象としたランニング傷害の原因となる運動力学的因子と身体構造的因子の両方を明らかにすることである。本研究ではランニング動作を課題とし、受傷群と非受傷群の間で比較検討した。さらに筋の断面積をMRIにより計測し比較検討した。動作と身体構造を分析することにより、先行研究では示されなかったランニング障害を発生しやすい者の運動力学的、身体構造的リスクファクターの特徴をつかみ、予防法確立・普及の基盤とする。 男子長距離ランナー13名を解析対象とし、彼らを内側脛骨過労性骨膜炎(MTSS)の既往がある群と既往がない群に分けた。三次元動作解析装置を用いてランニング動作中の下肢関節角度・モーメントを計測した。その結果、MTSSの既往がない群と比較して既往がある群のランニング中の足部内転モーメントは有意に小さかった。その他のアウトカムには統計学的有意差はなかった。このことによりMTSSの症状がないランナーでも、ランニング中の運動学・運動力学的差が生じていることを示すことができた。この内容の論文はBMC Musculoskeletal Disordersに掲載された。さらに下腿の大きさで正規化したヒラメ筋の横断面積はMTSSの既往がない群と比較して既往がある群のヒラメ筋が有意に小さかった。本内容については論文投稿中である。
|