本研究の目的は、日本のスポーツ政策の中で重要な位置を占める「地域スポーツクラブ」の育成について、近年の中央官庁による政策展開の方向性について分析を加えるとともに、実際にクラブの活動が実施されている地域社会で生起している現実について理解を深めることであった。特に、全国で活動する多くの地域スポーツクラブが、実際に、ボランティアの確保や運営財源の獲得に苦労するなど、わずかな「資源」での運営に向かってきた実態がある中で、本研究では、活動を持続させるために地域スポーツクラブではその運営の充実に要するリソースをいかなる回路から調達しているのか、そうした資源マネジメントをめぐる経営実践の実態について明らかにすることを目指した。 最終年度においては、研究機関全体の成果を総括する活動を中心に研究活動を進めた。Covid-19の蔓延に伴って、当初予定したフィールドワークが大きく制限されたため、本研究期間の中では、コミュニティ・スポーツを推し進める政策展開に焦点化し、官公庁による公表資料の分析といった視点から、近年の政策プロセスについて跡付けることができたことは、本研究の成果である。また、新型ウィルスの蔓延期には地域スポーツクラブの主催事業の中止が相次いだため、本研究期間内に実施できた調査の回数は限られてしまったが、過去に収集したフィールド調査のデータを加味した上で、クラブの資源調達をめぐる運営手法について分析することとした。その結果、安定的に事業を継続しているあるクラブの事例では、運営ボランティアメンバーが個人的なネットワークを駆使しながら、巧みに資源を収集している一つの実態が見えてきた。この発見から、コミュニティを円滑に運営するために社会的なネットワークの存在を重視するソーシャル・キャピタル論との親和性が浮き彫りになり、研究代表者における今後の研究活動の足がかりを形成することができた。
|