研究課題/領域番号 |
18K17829
|
研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
土屋 陽祐 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (20614473)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 繰り返し効果 / 伸張性収縮 / 筋損傷 / クロスエデュケーション / 運動単位 / 神経適応 |
研究実績の概要 |
骨格筋が張力を発揮しながら引き伸ばされる伸張性収縮は、短縮性収縮、等尺性収縮に比べて筋・関節機能の低下、遅発性筋痛の出現、筋の腫脹などの筋損傷を引き起こすことが広く知られている。そしてこれらの現象は、同じ部位に伸張性収縮を繰り返し負荷した場合、初回よりも2回目の方が軽減することが明らかになっている(繰り返し効果)。近年この繰り返し効果が運動を実施していない反対側にも生じることが観察されている(対側繰り返し効果)。しかし、対側繰り返し効果のメカニズムの解明は十分に進んでいない。2018年度は、磁気共鳴画像法(MRI)の横緩和時間(T2値)を用いて、対側繰り返し効果と筋線維の動員との関連を検証した。健康な若年男性11名を対象に、肘関節屈曲による伸張性収縮運動を最大努力で30回負荷し、運動前および直後のT2を測定した。また運動前、直後、1、2、3、5日後には筋損傷の指標である、等尺性随意最大筋力、関節可動域、遅発性筋痛、MRIによる筋横断面積を評価した。その後2週間の間隔を空け、同様の運動負荷試験およびT2、筋損傷の評価を実施した。その結果、先行研究と同様に本研究においても伸張性収縮を負荷していない反対側の腕における筋損傷の程度が抑制される対側繰り返し効果が確認された。また、1回目に伸張性収縮を負荷した腕の筋よりも、2週間後の伸張性収縮を負荷していない反対側の腕の筋の方が、伸張性収縮直後のT2の上昇が大きかった。したがって、対側繰り返し効果は筋線維の動員増加が一つの要因である可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018度は計画通り、磁気共鳴画像法(MRI)の横緩和時間(T2値)を用いて、対側繰り返し効果と筋線維の動員との関連を検証した。その結果、1回目に伸張性収縮を負荷した腕の筋よりも、2週間後の伸張性収縮を負荷していない反対側の腕の筋の方が、伸張性収縮直後の筋線維の動員が増加するという結果が得られた。2019年度は、長期的な対側性の筋力トレーニングを実施することで、急性応答に加えて長期適応の効果も明らかにできる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、対側繰り返し効果における長期適応を検証する。片側性の筋力トレーニング効果が、トレーニングを実施していない反対側の筋群にも現れることが数多く報告されており、この現象は“クロス・エデュケーション”と定義されている。このクロス・エデュケーションのメカニズムには、片側性の筋力トレーニングによって主動筋のみならず、非主動筋に対応する皮質脊髄の興奮増加などの神経系の適応が関連している。クロス・エデュケーションによる筋力増加は短縮性収縮よりも伸張性収縮トレーニングの方が大きいこと、低速よりも高速の伸張性収縮トレーニングの方が大きいことが報告されている。一方で、トレーニグの負荷や頻度とクロス・エデュケーションの効果については不明な多い。以上から、2019年度はトレーニグの負荷や頻度がクロス・エデュケーションの程度に及ぼす影響を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
機器購入を次年度に延期したため。 次年度は、筋力を評価する際に必要なPowerLabを購入する予定である。また、血液サンプルの分析費用および消耗品、被験者への謝礼金、研究成果発表などに研究費を使用する予定である。
|