骨格筋が張力を発揮しながら引き伸ばされる伸張性収縮は、短縮性収縮、等尺性収縮に比べて筋・関節機能の低下、遅発性筋痛の出現、筋の腫脹などの筋損傷を引き起こすことが広く知られている。そしてこれらの現象は、同じ部位に伸張性収縮を繰り返し負荷した場合、初回よりも2回目の方が軽減することが明らかになっている(繰り返し効果)。近年この繰り返し効果が、運動を実施していない反対側にも生じることが観察されている(対側繰り返し効果)。しかし、対側繰り返し効果のメカニズムの解明は十分に進んでいないものの、神経系の適応が関わっていることが先行研究によって示唆されている。そこで、本研究は磁気共鳴画像法(MRI)の横緩和時間(T2値)を用いて、対側繰り返し効果と筋線維の動員との関連を検証した。 健康な若年男性11名を対象に、肘関節屈曲による伸張性収縮運動を最大努力で30回負荷し、運動前および直後の上腕二頭筋、上腕筋の筋線維の動員(T2)を測定した。また運動前、直後、1、2、3、5日後には筋損傷の指標である、等尺性随意最大筋力、関節可動域、遅発性筋痛、MRIによる筋横断面積を評価した。その後2週間の間隔を空け、同様の運動負荷試験およびT2、筋損傷の評価を実施した。その結果、先行研究と同様に本研究においても伸張性収縮を負荷していない反対側の腕における筋損傷の程度が抑制される対側繰り返し効果が確認された。また、1回目に伸張性収縮を負荷した腕の筋よりも、2週間後の伸張性収縮を負荷していない反対側の腕の筋の方が、伸張性収縮直後のT2の上昇が大きかった。したがって、対側繰り返し効果は筋線維の動員増加が一つの要因である可能性が示唆された。
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