研究課題
本研究は、ストレッチングやマッサージなど筋の硬さを低減させる手法によって、硬化した筋がどのように回復(リカバリー)するかを検証するものである。最終年度の今年度は、これまでの実験で得られた知見のさらなる詳細解析を通じて、筋の回復に影響を与える因子(マッサージ・水分量・尿試料)について検討した。マッサージについては、自らがコンディション管理できる社会実装を見据え、関節可動域の拡大に効果の高いフォームローラーを使用したセルフでのマッサージによる局所組織(皮膚温やインピーダンス)と自律神経系の解明を試み、関節可動域の拡大にこれらが効果的であったことを明らかにした。水分量については、フルマラソンレースにて活動するハムストリングスのMR画像から、水分や腫脹を検証するT2強調画像を比較し、1年目の研究で明らかとなった筋内に生じるダメージの部位差を改めて確認するとともに誘発された水分や腫脹の増加に部位依存的な変化を観察した。また、細胞内/外水分量の変化は、兼ねてから関節の可動性や柔軟性に影響を与える因子として考えられてきたものの、筋の硬さに与える影響は不明であった。しかし、フルマラソンレースによって損失した水分量の2倍量をレース直後に飲水することで筋の硬さが低減できること、特に経口補水液の飲水は細胞外水分量の取り込みを加速させ、本来一時的に硬化する筋の硬さを早期に回復できる可能性を示唆した。また新たに、摂取した尿試料からサルコメア構成タンパクの一つで骨格筋由来の筋損傷を非侵襲的に定量するバイオマーカー(タイチン)を用いて定量/追跡することを可能にし、新たにフルマラソンレース後のタイチンと筋の硬さの相互作用の解析から手技によって損傷が加速する(悪化する)ことがないかを検証している。本研究で明らかにした知見は、いずれも自身のみで硬化した筋の回復を加速させる手法であり社会実装できる可能性が高い。
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