研究課題
近年の研究により,身体活動は加齢に伴う認知機能の衰退予防だけでなく,子どもから青年期においても認知機能を改善,発達させるための1つの手段となり得ることが報告されている.しかし,身体活動が脳構造や機能に与える効果に関する知見は乏しい状況にある.磁気共鳴画像 (MRI) を用いた研究により,身体活動は前頭前野背外側部や海馬の体積を増大させることが報告されているものの,脳の機能レベルで身体活動の効果を理解するためには,脳領域間の解剖学的ならびに神経活動レベルでの繋がりの変化を調べる必要がある.そこで本研究では,近年公開されたMRIで脳の構造・機能をより正確かつ詳細に計測・解析できるHuman Connectome Project 準拠のプロトコールで撮像したMRIデータ,ならびに解析パイプラインを用いて,20歳から60歳の健常者を対象に身体活動量と認知機能の成績に関わる脳の構造・機能的領域間結合の関連を詳細に検討し,身体活動が認知機能を改善,発達させる背景にある神経ネットワークの変化を明らかにすることを目的としている.平成30年度には,実験環境の整備を進めるとともに予備実験を実施した.具体的には,①実験に必要な機器の購入・設定,②MRI撮像プロトコルの作成,③認知課題の作成,④予備実験として大学生を対象に背景データ, 身体活動量データ,認知機能データ,および MRI データを取得した.上記の実験環境の整備および予備実験はおおむね順調に進み,平成30年度で本実験に移行する準備が整ったため,令和元年度から本実験を開始する予定である.
2: おおむね順調に進展している
平成30年度に行う予定であった実験環境の整備および予備実験が順調に進んでおり,令和元年度から本実験に移行できる環境が整ったため,おおむね順調に研究が進展していると判断した.
令和元年度には,本実験を開始し,目標とするサンプルサイズに到達させる.データ収集と並行して収集したMRIデータの解析を進める予定である.
平成30年度は予備実験にやや時間を要したため,当初予定していた本実験にかかる被験者謝金がかからなかった.令和元年度に予定通りの人数のデータを取得するため,その被験者謝金に使用する.
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