研究課題
近年の研究により,身体活動は加齢に伴う認知機能の衰退予防だけでなく,子どもから青年期においても認知機能を改善,発達させるための1つの手段となり得ることが報告されている.しかし,身体活動が脳構造や機能に与える効果に関する知見は乏しい状況にある.磁気共鳴画像 (MRI) を用いた研究により,身体活動は前頭前野背外側部や海馬の体積を増大させることが報告されているものの,脳の機能レベルで身体活動の効果を理解するためには,脳領域間の解剖学的ならびに神経活動レベルでの繋がりの変化を調べる必要がある.そこで本研究では,近年公開されたMRIで脳の構造・機能をより正確かつ詳細に計測・解析できる Human Connectome Project (HCP) 準拠のプロトコールで撮像した MRI データ,ならびに解析パイプラインを用いて,20歳から60歳の健常者を対象に身体活動量と認知機能の成績に関わる脳の構造・機能的領域間結合の関連を詳細に検討し,身体活動が認知機能を改善,発達させる背景にある神経ネットワークの変化を明らかにすることを目的としている.令和元年度には,本実験を進め,データの収集に努めた.さらに,HCP が公開している 1,033 名のデータセットを用い,体力(有酸素性の持久力,歩行速度,巧緻性,筋力)とワーキングメモリー課題成績ならびに課題関連脳活動の関係を分析した.その結果,有酸素性の持久力と巧緻性が高い者ほどワーキングメモリー課題の成績が高く,前頭頭頂ネットワークとデフォルトモードネットワークに関わる領域の課題関連脳活動がその関係を媒介していた.
2: おおむね順調に進展している
令和元年度に行う予定であった実験がおおむね順調に進んだため,令和2年度にはデータが揃い,データ解析・論文執筆に取り掛かることができる状況である.よって,おおむね順調に研究が進展していると判断した.
令和2年度には,引き続き本実験を進め,分析に必要なデータを全て収集することを目指す.得られたデータを用い,身体活動や体格と安静時 (f)MRIデータ(脳構造・機能的領域間結合)の関係を分析する予定である.
令和元年度に全ての対象者のデータが揃う予定でいたが,一部の対象者のデータ収集が令和2年度にずれ込んだ.それにより,令和元年度に購入予定だったデータ解析用PC,統計ソフトウェア,データ記録メディアの購入が遅れたため.令和2年度には予定通りこれらの設備備品・消耗品を購入予定である.
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)