研究課題
近年の研究により,身体活動は加齢に伴う認知機能の衰退予防だけでなく,子どもから青年期においても認知機能を改善,発達させるための1つの手段となり得ることが報告されている.しかし,身体活動が脳構造や機能に与える効果に関する知見は乏しい状況にある.磁気共鳴画像 (MRI) を用いた研究により,身体活動は前頭前野背外側部や海馬の体積を増大させることが報告されているものの,脳の機能レベルで身体活動の効果を理解するためには,脳領域間の解剖学的ならびに神経活動レベルでの繋がりの変化を調べる必要がある.そこで本研究では,近年公開されたMRIで脳の構造・機能をより正確かつ詳細に計測・解析できる Human Connectome Project (HCP) 準拠のプロトコールで撮像した MRI データ,ならびに解析パイプラインを用いて,20歳から60歳の健常者を対象に身体活動量と認知機能の成績に関わる脳の構造・機能的領域間結合の関連を詳細に検討し,身体活動が認知機能を改善,発達させる背景にある神経ネットワークの変化を明らかにすることを目的としている.令和2年度にはデータの収集が概ね終了し,幼少期の運動経験と認知機能の関係を分析した.その結果,児童期に運動経験を有していた者は,認知機能が高い傾向にあった.また,児童期の運動経験と認知機能の関係は,前頭頭頂ネットワーク,帯状弁蓋ネットワーク,デフォルトモードネットワークを中心とした脳の構造・機能的領域間結合に調整されていた.
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の対応のため,データの取得が遅延した.
2021年度は引き続き得られたデータの分析,学会での成果報告,論文化を進める予定である.
新型コロナウイルス感染症への対応により,データ収集が当初の予定よりも遅延した.それにより,令和2年度に購入予定だったデータ解析用PC,統計ソフトウェア,データ記録メディアの購入が遅れたため.令和3年度には予定通りこれらの設備備品・消耗品を購入予定である.
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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