研究実績の概要 |
本研究は博士学位論文で開発した「ドーピング意識とスポーツ規範」の尺度を使用して、国際的な研究の視野に立ち、更なる他国での調査から、「ドーピング意識」にどのような「スポーツ規範」が影響を与えるのか、またその社会的な要因モデルについて明らかにすることを目的としてきた。 2018年度はイタリアの聞き取り調査を行い、イタリアのドーピング事情について多くの知見を得ることができた。2019年度はアメリカの聞き取り調査を行い、アメリカのドーピング事情について知見を得ることができた。2020年度からは日本とアメリカと韓国の体育大学生に「ドーピング意識およびスポーツ規範意識調査」を実施しデータを収集することができた。 しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大のためやむを得ず研究は延期するにいたった。そのため、聞き取り調査を延期して、2020年度と2021年度にはオンラインでアメリカと韓国の体育大学生に対する追加調査を行った。また、2022年度は日本の学生903件の調査結果の分析から論文を作成して投稿した。 2023年度は韓国の聞き取り調査を実施した。韓国・日本のデータを比較検討したところ、「指導者からサプリメントをもらったら飲むか」や「ドーピング行為は個人の問題であり、他人に迷惑はかけない」という質問において、日本より韓国の方が高い値を示したため、慶煕大学のOh,Kyung Rok学長等とこの結果について議論を行った。結果、韓国の学生はジュニアから育成され、ナショナルチームに関わりがある選手が多く、アスリート教育を受けてきていることから、指導者に言われたことに対して従順であることが推察された。韓国のこれまでの研究と今後の研究について意見交換を行い、新たな研究協力体制を構築することができた。現在、3カ国の「ドーピング意識」と「スポーツ規範」の比較分析を行い論文投稿の準備を進めている。
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