研究課題/領域番号 |
18K17834
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
森嶋 琢真 法政大学, スポーツ研究センター, 講師 (60771706)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 筋運動 / 血管内皮機能 / 有酸素性運動 / 血圧 / シェアストレス |
研究実績の概要 |
本テーマの最終目的は、筋運動後における血管内皮機能の低下を予防・回復させる新規の運動プログラムを開発することである。この目的に対して、当該年度では2つの研究を実施した。 まず、特性の異なる筋運動が血管内皮機能に及ぼす影響を検討した。健康な男性13名を対象に、1.中強度・中反復回数の筋運動を行う条件(中-中条件)、2.低強度・高反復回数の筋運動を行う条件(低-高条件)、高強度・低反復回数の筋運動を行う条件(高-低条件)を設け異なる日に実施した。各筋運動の前後では血流依存性血管拡張反応(FMD)を実施し、血管内皮機能の変化を測定した。その結果、中-中条件および低-高条件では筋運動後に血管内皮機能は有意に低下した。一方、高-低条件では筋運動後にも血管内皮機能は維持された。 以上の結果から、高強度・低反復回数の筋運動では血管内皮機能の低下が予防される事が明らかになった。しかし、高強度・低反復回数の筋運動は筋運動の最大の目的である筋肥大に対する効果が小さいという課題が残った。 次に、筋運動後における血管内皮機能の低下を回復させる方法として、有酸素性運動の効果を検討した。健康な男性17名を対象に、1.中強度・中反復回数の筋運動のみを行う条件、2.中強度・中反復回数の筋運動後に10分間のサイクリングを行う条件を設け、異なる日に実施した。各運動の前後ではFMDを実施し、血管内皮機能の変化を測定した。その結果、両条件とも筋運動後に血管内皮機能は有意に低下した。筋運動のみを行う条件では、その後血管内皮機能の低下は60分間にわたって続いた。一方、筋運動後に10分間のサイクリングを行う条件では、サイクリング後に低下した血管内皮機能は回復した。 以上の結果から、筋運動後に(少なくとも)10分間の有酸素性運動を行う事で、低下した血管内皮機能は回復する事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度では、筋運動後における血管内皮機能の低下を予防・回復させる方法を明らかにする為、特性の異なる筋運動の効果および筋運動後における有酸素性運動の効果を検討した。結果として、1.高強度・低反復回数の筋運動では血管内皮機能の低下が予防される事、2.筋運動後に10分間のサイクリングを行う事で、低下した血管内皮機能は回復する事を新たに明らかにする事ができた。 当初、筋運動後における有酸素性運動の効果に関する研究は次年度に実施する予定であったが、当該年度内に実施できポジティブな結果を得る事ができたのは一定の成果である。また、1つ目の研究課題は主要国際誌に原著論文として掲載された。 以上の諸点から、平成30年度の研究進捗は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究により、筋運動後に10分間のサイクリングを行う事で、低下した血管内皮機能は回復する事が明らかになった。一方でこの方法では、筋運動直後における血管内皮機能の一時的な低下は避けられない点が問題である。 そこで今後は、筋運動後における血管内皮機能の低下を予防する方法を明らかにしていく予定である。具体的には、事前の有酸素性運動や筋収縮特性に焦点を当てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外から物品を購入する必要があり、予定より納品に時間が掛かった事で予算の執行が次年度に持ち越しになった。 翌年度は、上記の物品購入と合わせ、被験者への謝金や研究成果発表の為の旅費に助成金を使用する予定である。
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