研究課題/領域番号 |
18K17844
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
齊藤 亜由子 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90710715)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視線計測 / スノーボード / 運動計測 |
研究実績の概要 |
スノーボーダーの視線と運動との関連を解明するための第一歩として,ターンにおけるスノーボーダーの視線,雪面反力,頭部姿勢を計測し,上級者スノーボーダーの視線移動の特徴について解析した. 本実験に参加したスノーボーダーは,日本スノーボード協会公認A級インストラクター資格所持者2名(被験者A,被験者B)である.計測においては,スノーボーダーの頭部に視線計測システム,頭部と体幹に9軸モーションセンサ,スノーボード板とビンディングの間に雪面反力計測システムを装着し,スノーボーダーは平均斜度約10度のコース内に設置した12本のポールを滑走した. 計測結果より,被験者Aはターンの中心付近において次のポールに視線を移動させており,被験者Bはターン開始直後に次のポールに視線を移動させていることが明らかとなった.被験者Bは長期間のスラローム競技経験を有しており,早い段階で視線を次のポールへ移動させるように意識しているため,このような結果が得られたと考えられる. 頭部の左右旋回動作と視線の移動時点に着目すると,被験者2名ともに,旋回開始と同時,または回旋開始直後に視線を次のポールに移動させており,本結果はターンの先行動作として視線と頭部姿勢が協応して変化している可能性を示している. また,申請時に予定していた「異なる特性を有するボードを用いたスノーボーダーの視線・運動計測」に関しては,フリースタイルスノーボードとアルペンスタイルスノーボードを用いたスノーボーダーによるターンの計測実験を行い,それぞれのボードを使用した際の左右足部の圧力中心の特徴の違いを得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画においては,平成30年度に「計測システムの開発」,「スノーボーダーによる計測実験と運動解析」を行う予定となっており,予定した内容はおおむね実施している.申請時に予定していた「異なる特性を有するボードを用いたスノーボーダーの視線・運動計測」に関しては,フリースタイルスノーボードとアルペンスタイルスノーボードを用いたスノーボーダーによるターンの計測実験を行ったが,視線を解析するために十分な視線データを得ることはできなかった.平成30年度の実験を通して,屋外においては太陽光等の影響により被験者の瞳孔径が小さくなることや,雨や雪の影響でまばたきの回数が増えるなどの理由により視線計測を安定して行うことが困難であることが明らかとなった.特に,降雪時は雪が太陽光を反射するため,瞳孔を検知することが困難である.そのため,計測中に瞳孔を検知できない区間はデータが欠損しており,詳細な視線解析を行うことはできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の実験結果より,上級者スノーボーダーのターンにおける大まかな視線移動の特徴を得ることができたが,被験者により視線移動の特徴は異なることが明らかとなった.また,屋外においては視線計測を安定して行うことが困難であるため,次年度の研究計画を以下のように変更する. 申請時の計画においては,平成30年度に実施した計測実験結果を利用して,平成31年度に「視線と運動との関連性を解明するための解析法の構築」,「視線と運動との関連性の解明」を行う予定としていた.しかし,平成30年度の視線計測データに欠損が含まれることや,実際の雪面においてデータ欠損無く計測を行うための対策を平成31年度中に講ずることが困難であることから,「視線と運動との関連性を解明する」ための基礎的研究として,平成31年度においては,スクワット運動などの単純な運動を行う際の視線と身体バランスとの関連性を解明するための解析法の構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
近隣スキー場において計測実験を行うことができたため,旅費の使用額が予算より少なくなった.また,研究成果を論文として投稿予定であったが,十分な成果が得られなかったため論文投稿を見送っており,論文掲載料として計上したその他の予算を使用しなかった. 次年度は,海外で開催される国際会議に出席予定であり,前年度使用しなかった旅費を国際会議出席費用の一部として使用する.また,前年度論文掲載料として計上したその他の予算を今年度の論文掲載料として使用する予定である.
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